専門家に聞くCSRのドライバー

今日の授業は、おまちかね、ジョナサン・ポリット(Jonathan Porritt)による「企業の倫理的経済活動」について。ジョナサン・ポリットといえば、Forum for the Futureの創設者の一人もであり、そして政府の環境対策委員会(Sustainable Development Commission)、つまり、トニー・ブレアに直接、環境について色々と助言する委員会の委員長をつとめる、イギリスではちょっとした「環境有名人」です。ジョナサンは、写真では優しそうで温厚なおじさんという印象だったんですけど、実際は、かなりエネルギッシュでさばさばした方でした。

ジョナサンのレクチャーは、まずはCSRの言葉の定義と歴史から。

「Corporate Social Responsibility (CSR)に関しては、Corporate Responsibilityとか、Corporate Ethicsとかいろいろな言い方がされているけれど、最近では、”Social”をはぶいて、”Corporate Responsibility”と言うことが多い。ただターミノロジーだけの問題なので、あまり気にする事は無い。企業は17世紀に登場したもので、最近では”CR”がはやり言葉になっているけれど(日本でも2003年がCSR元年と言われていた)、別に新しい問題というわけではない。ただ、最近ではどんどん企業が人々の生活に入り込む力が増大しているし、環境問題が深刻化しているので、多く話されるようになった。」

「企業の唯一の目的は、どれだけ短期間に利益を最大化できるか、(short term profit maximization)というそれだけ。企業自体が、そのことの奴隷になってしまっている。トップ企業のCEOが集まる会議に出席して、CSRについてどう思っているか?という質問をしたら、誰も返答しなかった。それどころか、そんなこと気にしたら私たちはとっくに首になってるよ、と言われた。その時ばっかりは、本当にぞっとして怖くなった。」とかなり悲観的……

「今のCSRの動きは楽観視できない。企業活動を倫理観とモラルからプッシュすることは難しいと思っている。ボランタリーな転換に頼っていては遅すぎる。企業のCSRを活性化させるためのプレッシャーとして、一番力があるのは、Hard Law、つまり政府の権力。政府が環境税などで規制をかけたりしなくてはならない。その後に来るのがSoft Law、つまりWTO、OECDのガイドライン、UNのGlobal Compactなどのボランタリーなスタンダード。またNGOが提唱するBalance Score Card(利益だけではなく、Innovation and Technology, Governance, Stakeholder responses, employer satisfactionなどの項目の指数を評価の対象とする考え方)などのスタンダードを導入する方法もある。」

「過小評価してはならないのは、企業で働いている一従業員の影響力。あまり指摘されていないけれど、スタッフのモラルは企業理念を転換していく大きな原動力になる。」

もちろん企業活動を変えていくドライバーは、政府の圧力や企業の自発性だけではなく、消費者の倫理的な行動でもあることは言わずもがな。ジョナサンのレクチャーは、現場のイキイキとした話に満ちていて説得力があったし、現状を把握する上では面白かったけれど、「じゃぁ、実際にどうすればいいの?」という希望はあまり見えてこなかったのが残念でした。まぁそれだけ自体は深刻だということなんでしょうか….