The Future of Food (未来の食)

futurefood01.jpgあなたは今日、何を食べましたか?その食べたものはどこから運ばれ、どのように作られたか知っていますか?

私は、なるべく健康に良いものを食べるようにしよう、殺虫剤を使っていないオーガニックのものや地のものを食べるようにしょうという程度で、これまで食についてそこまで真剣に考えたことがなかったんですが、土曜日にロンドンで行なわれた”The Future of Food”(未来の食)というイベントに出席して、食の問題はもっと真剣にみんなが考えていかなくてはならない重要なテーマだ、世界はかなりヤバいことになっているな…..ということを痛感しました。

このイベントは、世界ではじめて出版されたエコロジー系の雑誌“Resurgence”(私の大好きな雑誌です。日本でも英語版は販売されているようです)が主催したもので、会場にはNGOのアクティビスト、アーティスト、農家の人、私のような環境問題に興味を持っている学生など、およそ200人の人たちが集まりました。イベントでは、現在、世界でおきている食についての現状について、各分野の際立ったリーダーたちが意欲的なスピーチを行ない、熱気にあふれていました。

まずはじめに、International Forum on Globalization会長のJerry Mander氏。白髪のおじいさんで、スピーカーの中では一番年長。(写真一番左)スピーチは大変分かりやすく、熱がこもっています。

「一日2ドル以下で生活せざるを得ない人たちは、世界で14億人(世界の5人に1人)です。同じく飢餓で苦しんでいる人たちは、ここ5年間で増え続けていて、世界の18%。とても皮肉なことに飢餓で苦しむ人たちのほとんどは、農業を営んだり、以前、農業をしていた人たちなんです。以前、彼らは自分たちや地域の人たちの食物を小規模農業でまかなっていました。土地に負担をかけずに、いろんな野菜や果物を栽培していたんです。でも、西洋の多国籍企業がやってきて、土地は買収され、効率よく西洋諸国で売れる食物だけを栽培するように強制されてしまったんです。大豆や魅惑的なパッション・フルーツなど、その土地とは全然関係ないような食物を殺虫剤をばらまいて大量に摂取するモノ・カルチャー農法に切り替えてしまったんです。大企業は自分たちの腹を満たすため、そして現地の人たちなんかより、西洋諸国が食べ続ける豚や牛の家畜の餌を栽培するために、伝統的な農業を奪ってしまったんです。」

futurefood02.jpgしかも農家の人たちには正当の労働賃金が払われていない、という問題も。食の問題に関してのかなりショッキングな南北問題がJerryさんのスピーチで明らかになった後は、次のスピーカーTim Lang氏。Timさんは、”Food War” (食の戦争)の著者で、世界で唯一、食政策に関する大学院コースがあるロンドン大学で教鞭をとる、イギリスの消費活動家。「食の問題については、健康という視点で見てみても、かなりヤバいことになっています。世界中どこを見ても、肥満の壁が押し寄せている。これはアメリカやイギリスに限った事ではないんです。ヘルシーな食生活をしていた日本や中国、それに飢餓に苦しんでいる人たちがいるアフリカでさえも地域によっては、肥満の人が増え続けているんです。その反面、食べ物へのアクセスが全くない人は増え続けている。そして食べるものがある人は、どんどん安くて粗悪で栄養素の低いものを食べる、という傾向になってきている。企業にとっては、太っている人たちや栄養不足の人たちが多ければ多いほど、ビタミン剤やダイエット食品をガンガン売れるので、好都合なわけですよ。つまり企業が新たなビジネスを確立するために肥満者を意図的に増やしているとも言える。本気でこの問題に取り組んでいる政府も全くなし。それどころか、アメリカなんて国家予算のうち多額の研究費を、製薬分野に支出しているんですよ。私は悲観的ではないけれど、怒っているんです。酔いをさまさないといけません。」 Timさんは、さすがもと消費活動家のインテリ。バンバン統計を使いながらとても説得力のある熱のこもったスピーチでした。TimさんとJerryさんのスピーチから、世界規模にふくれあがってしまって行き着くところのない経済活動と、まともなビジョンがない政治が「食の戦争」を巻き起こしてしまっている、というコトの重大さが伝わって来てかなりショッキングです。

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次は、Vandana Shivaさん。Vandanaさんは、遺伝子組み換えの種を販売しているモンサト社を相手に真っ向から戦ったインドの活動家で、食の問題に関しての第一人者。「企業はインドの農家に対して、 全く不当な要求をつきつけてくる。効率と大量生産を求める農法で職を失うインド人も多く、去年は16000人のインド人農家が自殺した。オーガニックのものは高いというのは嘘。ちまたのスーパーやファースト・フードで売っているものが安すぎるんです。」
こんなにパワフルなおばさん見た事ないっていうぐらいの、すごみのある力強いスピーチでした。(近いうちに映像取材したテープをまとめるので、詳しくはそちらを見て下さい!)

日本を含む先進国では、飽食の時代。みんな「グルメ」で美味しいものを食べることには余念がないですよね。でも私たちが毎日食べてるものって、どうやって作られてるの?どこから来たの?ということを消費者である私たちが問わなくてはならないと思います。そしてもっとローカルな食品や自分の体にいい食物を感謝して食べる食生活に、つまりそういう消費生活に切り替えて行かなくてはならない、と強く思いました。そうしないと、自分たちの利益のためだけに、農家の人たち、伝統的な農法、そして地球の土を搾取している大企業の思うつぼになってしまって、食の南北格差はどんどん広がるばかりなわけです。たまには贅沢しておいしいものを食べることはいいと思う。でも世界中で5人に1人は飢餓で苦しんでいるんだと思ったら、そうそう贅沢もしてられないですよね。

futurefood03.jpgイベント全体の司会をした、”Resurgence”の編集長 Satish Kumarさん、「”未来の食”は、食との関係性や食の文化を私たちが取り戻すことによって決まって来る。手軽に始められるのは、クッキング。食べ物をおいしく作り、いただくと言う人間の基本的な行為です。それから庭がある人はガーデニング。土地との関係性を復興させ、自分が何を食べているのかということを自覚的に考えていきましょう。」

現代人はどんどん忙しくなって、料理を作ったり楽しんだりする暇もなくなって、出来合いのレトルト食品やファースト・フードですませてしまったりするけれど、それは自分の健康を害するばかりか、世界の肥沃な土地や、農業を営んで暮らしていた人たちの生活や精神状態も害してしまっている。食べることは毎日の行為。私たち一人一人が、責任ある豊かな食生活を自覚的におくらなくちゃいけない。それと同時に問題に気づいた人から、全ての人たちがきちっと食べられるように、今の政治や経済の体制を変えて行くことに積極的に参加していかなくちゃいけない。イベントに来ていた様々なバックグランドの人たちとそれを確かめ合えた私にとってはとても意味のある貴重なイベントでした。

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