Back to the Wild Side


ハワイ島旅の後半は、完全に野生化している私たちです。オーガニックファームで暮らす圭子さん宅で、自然の恵みをダイレクトに感じる日々を体験しています。裸足の生活が板につくようになり、心身ともにグラウンディング。便利で快適な生活が遠い過去の出来事となり、大地と直結した逞しくシンプルな生活が日常となりつつあります。それが「手作りのオーガニックライフ」という言葉から連想される、お洒落で愛らしいものであることも、女性としては嬉しい限りです。

圭子さんのお友達は実に広範囲。ハワイ島で再生可能エネルギーを広めるため大学教授から市議になろうとているデイビッド、植物の研究家のエリザベス、ガンを克服しイルカのように海で泳ぐディーバ、かご職人のキャシー、交通事故で一命をとりとめ啓示を受けギター弾きになったスコット、スタイリストをやめてハワイ島に住み着いたよしえさんなどなど。豊かな自然と新しい生き様を求めてハワイ島に流れ着いた人が多く、みんな助け合いながら暮らしを築いています。こちらはMakuu Marketでアンティーク品の店をかまえるビリー。陽気なハワイアンです。

毎週日曜日に開かれるマーケットは、地域の人たちが集って情報交換する場所でもあります。圭子さんファミリーも色んな人と、活発に交流していました。

次から次へと紹介して下さる圭子さんのお友達の中でも、特に印象に残ったのがクリスとヤナでした。「ぶっ飛ぶから」と最初に言われていた通り、彼らの家へビジットした経験は、数日たった今でも色濃く思い出します。完璧に原始的なジャングル生活での記憶は、日本に帰ってからも、いや日本のような場所で暮らすからこそ、何度も立ち返るものであることに違いありません。


彼らが極めて質素ながジャングル暮らし始めてから、すでに20年ほど。その前もカウアイ島の人里離れた山奥で暮らしていたそうです。でもその場所から立ち退きに会い、この島にうつって来たとか。アメリカ人のクリスは、家が農家だったこともあり、生粋の自然児。私たちが遊びに行った時も、ひょいひょいとココナッツの木に登って実をとってくれたし、プリンのような果物ロレニアや、別名ブレッドフルーツのウルなどエキゾチックな南国フルーツをもいで惜しみなく分けてくれました。

フランス人のヤナは歳の頃もう60歳ぐらいでしょうか。17歳まではパリ育ち。インドへ放浪の旅に出かけた自由奔放なヤナはパリを飛び出し、ハワイ島に住み着く事に。ここで生まれ育っているNakoaくんは、天然の野生児。危なっかしい岩の道を裸足でひょいひょい歩いて行きます。「でも上の子どもたちは反面教師でね。町に住んで、スクエアでストレートな生活をしてるわよ。信じられないし、全くつまらない生活だわ」とヤナ。ヤナはテクノロジーに対して極めて懐疑的で、現代文明とは無縁の生活です。

ヤナの住む「家」はジャングルの中の芸術です。壁はなく、屋根には木々の間にタープが張り巡らされているだけ。「いつでも大地を感じていたくって、こういう家の作りになったの。それにハワイは一年中、快適な気候。壁なんていらないでしょ。」多くの時間を過ごす家だから、自分の価値観をもっと柔軟に反映したものであっていい。「家」というものにに対する概念が、音をたててくずされた気がしました。実際、ハワイではテント生活をしている人たちがたくさんいます。テント=簡易な家ということでなく、自然と調和したシンプルな家を追求したら、そうなったという感じでしょうか。

でもびっくりすることに、ヤナの家の内装はまるでパリのアパートメント!土の上には、ところどころに色とりどりのタイルが敷き詰められたかまどやら、手作りの木の家具が置かれ、快適このうえないお洒落な空間です。「ここに来た時は何もなかったわ。本当にジャングル。海から石を運んで来たりして、少しずつ今の形になったの。私はフランス人だからね。美的センスはまかしておいて!」写真はヤナの「リビングルーム」にて。同じ時期に子連れ初ハワイの旅を満喫していたファイヤーダンサーのACHIKOと娘のしょうか。「島に降り立った時から、どうやって島に移り住むかを考え始めてる」とACHIKO。

クリスとヤナたちの住む世界は、完璧なるアバターの世界。動物たちと交信し合い、フルーツをもいで食べ、太古の地球の鼓動を感じながら暮らしているのです。情報があふれている世界で暮らす私たちは、そんな世界が現実に存在していることさえ、もう忘れてしまっているかもしれません。でも彼らと丸一日過ごすと、それこそが人間の本来の豊かな暮らしのように思えてなりませんでした。私自身、妙に五感が研ぎすまされ、目つきが変わった気さえしました。何より人生を常に緊張感を持って楽しく過ごし、突然の来客を喜んでくれ、心からもてなしてくれた彼らの心の在り方に感動しました。

人間と自然との関わりは、答えのない永遠のテーマ。誰もが自然のキャパシティーに配慮しながら、それぞれのより良いバランスを模索しながら生きています。その中でもクリスとヤナのような超原始的な生活が、今、最も注目すべき先端的ライフスタイルだと感じました。インドやラオスなど貧しい国々を旅して簡素な暮らしを垣間みて来たことはあったけれど、何でも手に入るアメリカという国で、プリミティブな生活をあえて選択している人たちがいることも嬉しかったです。ジャングル生活で受け取ったメッッセージ。それは、「Back to the Wild Side. もっと野性を取り戻そう」ということ。もちろんプリミティブな生活では、大変なこともいっぱい。でもその方がずっと健康で快適で楽しい。

そうハワイ島は、野性を取り戻してワイルドに過ごすのにはもってこいの島。この島には地球上の15の気候のうち、13が存在するそうで、それに合わせて見せてくれる自然の表情も全く異なります。大まかにわけて雨が降る東側はジャングルで多種多様な生き物たちと遭遇できるし、西側はドライで荒涼たる原野が楽しめます。ドライブしていると、この光景。ちょっと無口になってしまいます。

そこら中にある、綺麗な海で泳いだり波乗りするのも楽しいし(これはプナ地区のPohoiki)

(これはコナサイドのHookenaビーチ。絶好のキャンピング場。)

温泉がふきだしているワーム・ポンドで泳ぐのも格別です!

プナには、スチーム・ポンドがあるリトリート・センターもあります。天然サウナで気持ちいいこと、この上なしです。

施設内には、どこまでも深いクレーター(巨大な穴)がありました。これも自然の造形物。

そして何と言っても、大地をどこまでも埋め尽くすラバ(溶岩)の圧倒的な力には言葉がありません。一昔前、サーフタウンとして賑わった町Kalapanaは、今や重く黒いラバですっかり覆われてしまっています。人間がただただ立ちつくしてしまう、太古の気配をもつ風景がそこにはありました。地下のマグマが吹き出して途方もなく長い年月をかけて陸を作り、そこに少しずつ植物が生え始め、やがて緑の森となるのです。人間が登場するのは、そのずっと後です。

一見、何もない荒涼としたこの土地をあえて好み、家を建てて暮らしているマナちゃんという日本人女性にも会いました。伊豆大島で落ち着こうと思っていた矢先、ハワイ島で電撃結婚をして、この島に住む事を決めたそう。マナとは、ハワイ語で「霊的な力」のこと。マナちゃんは、まさしくKalapanaに、神聖なパワーを見い出したのでしょう。

星野道夫さんの「旅をする木」にあった神話学者ジョセフ・キャンベルの言葉を引用します。

「私たちには、時間という壁が消えて奇跡が現れる神聖な場所が必要だ。今朝の新聞になにが載っていたか、友達はだれなのか、だれに借りがあり、だれに貸しのがあるのか、そんなことを一切忘れるような空間、ないしは一日のうちのひとときがなくてはならない。本来の自分、自分の将来の姿を純粋に経験し、引き出すことのできる場所だ。これは創造的な孵化場だ。はじめは何も起こりそうにもないが、もし自分の聖なる場所をもっていてそれを使うなら、いつか何かが起こるだろう。人は聖地を創り出すことによって、動植物を神話化することによって、その土地を自分のものにする。つまり、自分の住んでいる土地を霊的な意味の深い場所に変えるのだ。」

私は、今、様々な理由から鎌倉に定住していて、今の私には最も理想的だと思っています。私は鎌倉を霊的な深い場所としてとらえているだろうか。鎌倉に戻ったら、意識を開いて、神聖な力をキャッチする感覚や時間を日常にもっと取り入れよう。ここハワイ島にあるケイコやクリスやヤナやマナの暮らしを思い出しながら。

こぼれ落ちそうな星空、見つけるとつい歓声をあげてしまうレインボー、数十メートルも叩き付けるように落ちる滝、両側をマンゴーの木でびっしり覆われた道、飲み込まれてしまいそうなオバケのような巨木、突然、怒濤のように降ってくるスコール。そして「あの豚はどうしたの」「この間、みんなで食べたよ」そんな日常会話。ハワイ島は私たちの意識と身体に眠っている生物としての緊張感をよびさまし、野性を取り戻してくれるパワー・スポットです。

でもパワーが強いだけに、浄化の速度もとてつもなく早く、頭痛がすることも多かったし、今まで出来た事のないような腫れ物が出来たりもしました。一時的に目が見えなくなる人もいるのだとか。生命エネルギーがものすごく強くって、髪の毛や爪がのびるのも早かったような気がします。そんなことも全て含めて、人間の本来持っている野性のパワーに立ち返らせてくれたミラクルなハワイ島体験です。