ポスト3.11 インタビューシリーズ ①世田谷こども守る会

福島原発事故からまもなく3年。この間、日本人のみならず世界中の多くの人が、自分たちの暮らしを立て直し、子どもの健康を守るという自覚と責任を受け入れ行動してきました。この問題に今どうコミットしているのか、これからどうしていきたいのか。今、何が大事なのか。それぞれのストーリーを活動現場のキーパーソンに伺い、ポスト3.11のライフスタイルと社会の行く末をさぐるインタビューシリーズ、第一弾です。 サポート:ソトコトこども基金


世田谷こども守る会

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「世田谷こども守る会」。ご存知の方も多いかもしれません。3.11以降、たまたま出会った世田谷区に住むお母さん達が結成した会で、子どもたちを放射能被曝から守るため、毎日の食卓や給食について気を配る活動を中心に続けています。

有名なのは「マダムトモコの厚労日報ダイジェスト」というメルマガ配信。全国のお母さん達に絶大な信頼を得ています。でも活動は、それだけじゃないんですね。共同代表の瀬田美樹さん(画面、右)と、広報担当の中山瑞穂さん(画面、左)にskypeにて伺ったら、女性の地域政治参加まで話しは広がり、、、

Q. どんな活動をしてるんですか?

厚生労働省が全国の自治体から集めた食品検査の結果があるんですけど、羅列してあるだけで、分かりにくいんです。それを眺めているだけでは、傾向が見えない。そこで世田谷こども守る会の堀智子、通称「マダムトモコ」が主婦目線で分析したコメントをつけて、全国のお母さんにメルマガ形式で発信しています。買い物をする側の助けになっているようで、今、登録者数は2000人を超えました。ただ単に「危ない!」と煽るのではなく、「意外と出てないわよ」「検出にばらつきがあるから、気をつけましょう」というような視点も盛り込んでいるんですね。マスコミからもとても高い評価を頂いています。

★ 例えば厚労省の日報はこんな感じ。 ★一方、メルマガはこんな感じ。分かりやすい!

Q. 今、気をつけるべきポイントは?

3年ほどたって、ある程度、食品汚染の傾向も見えてきています。何でもかんでも恐れる時期は終わりました。チェルノブイリの時もそうでしたが、きのこ、たけのこ、さつまいも、それからベリー類などは出やすいです。それから今は、加工品が要注意です。加工品は産地記述の規制がないので、なかなか測定する人がいない。特に大豆から出てしまっているので(茨城、宮城、岩手産)、お味噌やお醤油などは気をつける必要があります。大豆は輸入品が多いんですが、あえて国産をウリにしている豆腐や納豆が意外に盲点。産地表示をきちんとして欲しいですね。

あとは赤ちゃんの離乳食。本来、測定する優先順位が高いものがないがしろにされているのが問題です。これは今、全国の市民測定所がはかって情報を共有しています。

それから各自治体によって、はかっている食品の種類がばらつきがあります。自治体によっては、例えば牛肉ばかりをはかったりしている。例えばね、岩手県はまじめにはかってるので、その分、出やすいんですよ。でも宮城県ははかっているものの種類が少ない。だからマダムトモコは、「岩手県は頑張ってるよ」というメッセージをつけて発信したりもしています。

こういうことを国がやらないから、市民がやっているんです。もちろん文句も言っていて行政交渉もしているけれど、日々、被曝をしてしまっている状態なのであれば、一刻でも早く効果がありそうなことをやらないと。だから両輪ですね。

とにかく厚労省の基準値100Bq/kgをこえるものはほとんどなく、数値の高い食品は限られてきています。本当は20Bq/kgぐらいを線引きにする必要があると思いますが、今は厚労省と戦うより、市民レベルでできる現実的な策を模索して実行しています。

Q. 活動メンバーは?

コアメンバーは4,5人。みんな家は近かったけれど、3.11がなければ出会わなかった人たちです。今回の件で「ピピッ」ときたお母さんたちがたまたま偶然集まった感じですね。

(中山さん)私は今までふつうのサラリーマンだったので、地域に関わったこともなかったし、「区議会傍聴」なんてあり得ませんでした。「請願」と「陳情」の違いも知りませんでした。でも3.11以降、地域が大事だということとか、声をあげないと何も変わらないんだ、ということが良く分かったんです。

例えばフィンランドなどの国にくらべて日本は、子どもにかける予算が少ないんです。フィンランドの女性はものすごく声をあげるらしいんですよ。結果的に日本の3倍ぐらいの予算がついている。被曝も子どもの教育もそうですけど、私たちみたいな子育て世代があまりにも政治から離れてしまったことが関係しています。サイレントマジョリティーと呼ばれる私たちの反省もあるんです。だから小さな声だとしても、あげていかないと何も変わらない、と思ってやっています。

それにしてもSNSがあったのは、本当に大きいですね。仕事も子育ても忙しい母親たちにとって、インターネットはとても強い見方です。例えば、横浜市のお母さんがいち早く地元の議会に陳情書を提出したんですが、陳情書というものは、ある程度、フォーマットが似ていて共有できるものなんです。そこで横浜の方に内容を教えてもらったり、陳情書や請願書を共有するFBページを参考にしたり。そういうネットワークの強さを活かした活動というのは、チェルノブイリの時代と大きな違いがあるんじゃないでしょうか。

Q. メルマガ発信だけではなくて、地元で行政交渉もやっているんですね?

(瀬田)2011年6月に「放射能の測定器を買って、給食を検査して欲しい」というような要望書を世田谷区長に出しました。それから同年秋の議会に陳情をするための署名を、18000通ほど集めました。それが始まりで、今でも給食の安全性を高めることなど、やり取りを続けています。

最初は区長や行政担当者とも喧嘩し、3週間は怒鳴り合いでした。でも行政は行政の立場があることも分かったし、これでは前に進めないから、ある時、やり方を変えようと思ったんです。とにかく敵対視しないようにしよう、と。すると結果的に、私たちの要望が叶えられやすいことが分かったんです。だから歩みよる事の大切さを感じています。

例えば「シイタケを使いません」とは、厚労省の基準で100Bq/kg以下であれば、行政は口がさけても言えない。だから憤りがあっても、それを求めててもしょうがないんです。でも例えば作戦を変えて、マダムトモコの日報を毎日、担当に送っていると、じわじわとボディーブローみたいに効いて来る(笑)。「そうかぁ~、そういうのが危険なんだぁ」と分かってくれる。そうすると現場レベルで、栄養士さんがシイタケの使用を控えてくれたりするんですね。

今はいろいろなつながりが出来てきて、区議さんや教育長と交流したりしてるんですよ。コミュニケーション、というか飲みニケーション(笑)。いつもつながっていると分かり合えることもあって、彼らが大声で言えないことを、私たちが発信することもできる。世田谷の素晴らしいところは、行政の人たちや議員さんと仲良くなっちゃうところ。逆に、行政と喧嘩ごしになったところは、うまくいってないところが多いですね。「けんか腰」から、「歩み寄り」。いざという時に動いてもらえるように、常日頃から円滑にあちこちと連携をとることが大切だと実感しています。

今、小さい地域から声をあげて行く事が大切です。例えば脱原発にしても、地域がNOと言えば再稼働はない。もちろん国としての国策も見ながらですけど、今は自治体のレベルで成熟度をあげて行く時だと思います。だから世田谷の活動に意義を見出してやっています。

Q. ボランティアで活動が続けられているエンジンは?

いい仲間に出会えたことは大きいですね。あと目覚めちゃったし、知っちゃったからやめられないんです。最初は放射能から始まって、「え、日本ってそんなだったの?政治ってそんなだったの?」「憲法が改正されたらどうするの?」って。私たちが関わるべきだったことを、民主主義と言いつつやってこなかったことに気づいたんです。目隠しして、耳をふさいで生きて行くことはもう出来ないんです。後戻りは出来ません。

「政治に参加することもオシャレなんだ!」ということを見せたいんです。オシャレをすることと、子どもの教育を考えることは、どちらも母として大切なんだって。それトレンドしょ?という風に広げて行きたいですね。だから意識をあおるんじゃなくて、放射線の勉強会をやったり、お話会をやったりいろいろ工夫して、親しみをもってもらえたらと思っています。

Q. 活動をさらに深めるために、今、望んでいることは?

(瀬田)さまざまな活動をしている団体の連携が大事だと思っています。悔しい!というのはしょっちゅうですよ。でもあんまり気にせず、流します。お酒飲んで、忘れます(笑)。ちょっとした意見の対立でいがみ合うんじゃなくて、大きな目標に向かって手をつないでいこうという感じですね。意見は意見で尊重し合って、認め合う。日本人はあんまり得意じゃないですけれど。

(中山)私の中での大きなトピックスは、「女性」なんです。21年間サラリーマンをやってきて、女性も働きやすい環境にいたつもりですが、やはり日本は男社会だと感じることも多いんです。経済活動を離れ政治の世界をのぞいてみると、女性の考え方が色々な意思決定に反映されていないと感じます。だからこそ、54基も原発がある社会になってしまったけれど、「原子力村」の中に一人でも発信できる女性がいたら変わったんじゃないか?って思うんです。

あらゆる社会の接点に女性が普通にいる社会になれば、もっと生きやすくなるんじゃないか、って思うんです。特に閉塞感がある時は、その方がいいんじゃないか。おっさん達に飼いならされていない女性がたくさん出て来ることは、私の時代だけじゃ無理だけかもしれないけど、私が目指していることなんです。

Q. 活動の成果はどんな所に感じていますか?

(中山)今、実は悩んでいます。21年間サラリーマン時代は、半年毎にフィードバックがあったんですよ。何が目標で、何が成果かということがはっきりしていた。でも市民活動って、成果が見えにくいんですよ。もちろん日常的に「ありがとう」と言ってもらったりして嬉しいんですけど、本来、目指しているところになかなか行き着かない、というじれったさはあります。お金のことも、すごく悩む時です。理想が高すぎて、そのギャップに戸惑うこともあります。違うやり方に慣れる過程なのかな、と思うんですけど、フィードバックのない世界にまだ慣れてないんですよね。きちんとお金が払われるとか、評価されるとか。市民活動ってなかなか難しいですよね。長いスパンで見ると、これが「新しい市民社会の第一世代」と思いたいですね。


お話を伺った後で:

「地域政治への参加への意欲!」お二人から感じたのは、なんと言ってもそのエネルギーでした。知ってしまった限りは、放っておけない。問題はとてつもなく大きいけれど、新しいつながりを活かしながら朗らかに、そして無理せず、自分たちの足元から一つずつ暮らしを作りかえていこう。そういったエネルギーが、小さいながらも各地域から生まれ育っていることが、ポスト3.11の希望の光だとつくづく感じました。

もう一つ心に残ったのが、「対話」の大切さ。どうしても「対立」して力づくで説き伏せて解決していこうという傾向が社会ではいまだ強い中、相手の立場も鑑みながら、解決を急がずに我慢強く、敵を見方に変えながら、ゆっくりみんなで進んで行く。それが遠回りのように思えて、実は、多くの人が求めている社会への近道なのではないでしょうか。結果ではなく、そのプロセスにこそ、人として、社会としての学びと成熟があるはずです。

対話の行為は、一言でいうならば「愛」。中山さんが強調されていた「女性のパワーが必要」というのは、「もっと政治、社会に愛を!」というメッセージに集約されると思いました。中山さん、瀬田さん。お忙しいなか、コスタリカとつながって、お話をたっぷり聞かせて頂き、ありがとうございました!LOVE IS THE POWER!