ポスト3.11 インタビューシリーズ ② サーフライダー・ファウンデーション・ジャパン

Surfrider Foundation Japanサーフライダー・ファウンデーション・ジャパン 事務局長 松原広美さん インタビュー http://www.surfrider.jp/

サーフライダー・ファウンデーションは、海を愛するサーファー、ボディーボーダー、全ての人の視点から、美しい海や海岸環境を次世代に引き継ぐため、海岸保護/調査/環境教育などの活動を熱心に行なっている国際環境保護団体。その日本支部の事務局長でもちろんサーフィン大好きの親友、事務局長の松原広美さんに、あの日3.11から3年経過する目前に、skypeにてコスタリカからお話を伺いました。「汚染水がもれているから、なんとなく不安」「魚はもう食べない」といった声を、日本から遠く離れたコスタリカでもよく耳にするようになってしまった昨今。私も心配でしかたありませんでした。でも松原さんのお話を聞いて、意外な発見もあり、なんとなく心が落ち着いたのも確か。やみくもに単発的なニュースに翻弄されるのではなく、海のようにどっしりゆるやかに。そんな印象を得たインタビューでした。

Q. 原発事故後、海水の汚染度について調査を続けてきましたよね。どんな調査をしてきたんですか?

茨城県、千葉県(2ヶ所)、そして神奈川県の湘南、最近は宮城県のサーフポイントで、海水と海底土のサンプルを採取して検査機関に送り、セシウム134と137の検査をしています。あくまで私たちはサーファー目線で活動している団体なので、専門家による綿密な調査というよりも、市民目線でできることを、ボランティアが月1~2回の頻度で続けています。海全体の調査というよりも、サンプルは波打ち際でももぐらいまで浸かって採取できるものを扱っています。プロジェクトのウェブサイトは、こちら、"Our Water Our Life"

Q. 調査の結果は?

最初は、海にあれだけ放射性物質が放出されたんだから、検出されると思っていたんです。でも幸いなことに、海水で希釈されるので、それほど高い数値は、今の今まで一回も出ていないんです。

もっと専門的な研究機関が調査して、海底を深くもぐれば、ストロンチウムなどの物質が出るかもしれません。海の中にもホットスポットがあるとは思うけれど、残念ながらそれを調べるお金も技術も私たちの団体にはありません。海の汚染はさまざまな研究がなされているけれど、科学者や研究者でさえも、いまだ真の答えがないといっています。

プロジェクトを立ち上げた当初は、放射性物質の拡散や汚染状況を知るためのひとつの指標になれば、と思ったんですが、実際は実行に移すにあたって、採取場所での理解、ボランティアの手配や、検査機関の開拓、調査方法の確立化、調査費用のファンドレイズなど、問題は山積みでした。そうした課題をひとつずつクリアしていって、いまでは、志ある個人や企業の寄付と理解、協力を得ることができ、安定した調査を継続することができています。

この調査では、海は安全ですとか、危険ですというために調査をしてるわけじゃなくて、私たちは自分たちで出来ることを地道に淡々と続けているだけです。原発をなくそうだとかいろんな活動はもちろんやるべきだけれど、団体の使命からすると、客観的なデータを積み上げて行って、無責任に聞こえるかもしれないけど、サーフィンをするうえでの一つの指標と判断材料になれば幸いです。市民レベルだけれども、ボランティアによって調査を続けて行くこと、それが私たちの役目です。私たちが私たちの視点で考える調査とデータを積み上げて公開していくことが大切だ、というのが3年たって辿りついた一つの方向性です。

Q. 調査の結果からどんなことが言えますか?

これに関しては正解はないと思ってます。放射能はけっして良くないものだとは分かっているけど、どの程度なら安心できるのか、どの程度なら安全じゃないのか。どこで線をひくかっていうのを、私自身が模索し続けた3年間でした。専門家ですら、その見解は別れるところで、いまだに答えは出ていません。移住した人から見たら、千葉の海は汚染地域でしょ?ってなるし、千葉に住んでる人からしたら茨木から北はダメでしょ、となる。根拠も人それぞれです。

Q.「カルフォルニア沖の魚からも汚染物質が発見された」などのニュースもよく聞き、コスタリカでも心配している人がいます。

海は45億年もの間、変化再生を繰り返しながら、生き延びて来ました。そういうパワーがあるんです。太平洋を渡ってそちら側に到達する可能性はあるかもしれないけれど、多分、人類の歴史をひもといてみると、そんなことは今までも、報道されていないこともふくめていっぱいあったはず。それでも海はちゃんと今もあるし、常に何事もなかったかのように海水は循環し続けています。土壌とくらべると、蓄積はしにくく、水は常に流れ続けて拡散していく性質をもっています。

もっともこれには科学的な根拠があるわけではないし、放射性物質は辿り着くとは思うけれど、一人一人が「じゃぁどうするの?」って話しですよね。毎日、心配して生き続けるのもいいけれど、自然はタフだしずぶといですよ。投げやりで、大丈夫だよっていってるんじゃなくて、長い長い目でみれば、本当に大丈夫だと思うんです、地球はね。それを、人間が理解しよう、コントロールしようとするから不安に陥るだけで、自然界では自然にほっとけば花や草が育つように、海もそうですよね。人間は80年ぐらいの寿命で死んでいくわけで、自然は、人間が滅びても、きっと生き続けているはずです。

私はポジティブで、楽観的です。幸か不幸か、海はいろんなものを希釈もして拡散もしていくわけで、そうやって今までやってきたし、海は人間が考えるよりはるかに強く、たくましいと思うんです。放射能汚染に限らず、さまざまな形で海洋汚染、環境破壊はされていますが、自然はきっとリカバリーできると思っています。数百年かかるかもしれない。滅びるのは人間のほう。人間は自分で自分の首をしめています。

Q. 松原さんは、千葉県いすみでサーフィンしてますよね。

事故から3,4ヶ月は私も海に入っていませんでした。全体的に自粛ムードがあったし、あの状況でサーフィンを楽しむような心理じゃなかったし、もちろん放射能に対しての漠然とした不安もありました。

でも私はサーフィンをしないとバランスをうまくとれないというか、生きていけないから、気をやむよりも、少しでも海に入って浄化されたいと思ってサーフィンをしています。いま調査している数値を根拠にするとしたなら、海に入って被曝するほどのレベルではないと思っています。例えていうなら、飲料水のように、海水をがぶがぶ飲む訳じゃないし、海の空間線量は陸地のそれよりも低い傾向にあります。

福島原発はまだ全く収束していない状況だし、汚染水はダダ漏れしているし、メディアは何も報道しないし、40年で廃炉と言っているけれど不可能だと思っています。でも私自身、3年間やってきた調査から自分で信じられることをベースに、自分でラインを決めて、海に入っています。それでも、事故前に比べると、不安な要素はたくさんあって、何か心にひっかかって、ただただ純粋には楽しめなくなりました。

魚に関しては、なるべく食べないし、月1回だったらいいかな~、でもやっぱりやめておこうかなぁ~と買い物するために躊躇することは増えました。

Q. 今回の事故に関して、サーファーとしてどんな思いを持っていますか?

もちろん二度とあってはいけないと思うし、失敗から学び、次につなげていくしかないけれど、そのために自分が何ができるのかを考えると、結局、自分一人が社会のために出来ることは小さいと思っています。ただ、同じ想いや価値観をもつ仲間を一人でも増やしていくこと、そうした人とつながっていくこと、一緒に丁寧な暮らしをつくっていくこと。そして、それを周りに伝播させて、人々の意識を変えて、その人達の行動や暮らしをちょっとでもよい方向にシフトできたら いいですよね。

Q. 福島のニュースは、今、どうキャッチしていますか?

最近は、ウェブサイトを見て情報をやみくもに入手することはなくなりました。汚染水もれは気にかけていますけどね。情報集めに翻弄してしまうと、頭でっかちになりやすいですし、知識おたくになってもしょうがない。じゃぁ自分はどうするの?と考えながら、その判断のベースになるような情報を集めるのはいいと思うけれど、その情報を知って右から左へただ伝える、ということは、私は卒業したんです。知ったかぶりは嫌だし、分かったつもりもないし、まったく何も分かっていないけれど、情報に翻弄されるのは疲れるでしょ?それより現地の人に話しを聞いたり、仲間を作ったりすることを大切にしたい。だからウォッチしてるものとかは、そんなにありません。

Q. サーファーたちへのメッセージはありますか?

サーフィンして下さいとか、しないで下さいという目先のことではなくて、これをきっかけに、食の問題とか、地球のあらゆる課題だとかを考えてくれるサーファーが一人でも増えればいいなと思っています。放射能汚染は最近のことで誰にも明確には分からないけれど、農薬や化学物質など汚染なんていつの時代にもあったわけですよね。今回のことは甚大な事故になってしまったけれど、そのことで気を病むより、自分はほんとうに環境に害を与える暮らしをしていないか自問してみて、完璧じゃなくても、例えば食を見直すとか、着るモノ、洗剤に気をつけるとか、自分自身の意識を高めて、ライフスタイルを見直すきっかけにするとかね。

海の素晴らしさや気持ちよさは共有してるわけだから、仲間を増やしていくこともできますよね。日本人サーファーが、「責任あるリスポンシブルな生活をしている人種」ということになって社会的にリスペクトされれば、説得力が増すし、ムーヴメントが力強くなっていきます。自分がロール・モデルになれるとは思わないけれど、我々の活動の目的や意義を感じ取ってくれた人が、大きな視野でホリスティック(全体的)に物事を考えるきっかけになって、実際にアクションに移してもらえればと思います。今回のことで意識が変わったサーファーもたくさんいます。

Q. これからの活動について教えて下さい。

サーフライダーとしては、地道にサーファー目線/市民目線で調査を続けて行きます。それがいつしか意味のあるデータになって一つの指標になればいいと思っています。こういう団体からこういうレポートがあるんだよ、ということで国や大学研究機関のデータと比較されたり、何かしらの貢献ができればいいな、と。市民のニーズから出たデータが、世の中の仕組みづくりに役立ったらいいと思っています。

海外の人からは「なんでもっとアクションをおこさないの?」と言われたりもするけれど、例えば政治的なアクションには、現段階ではなかなか結びつけられない複雑な問題です。だから、いまは、市民レベルだけども、ボランティアによって調査を続けて行くこと、それが私たちの役目です。原発には反対ですが、反、脱原発運動や、自然エネルギーへの転換を促すことは、もともとSFJのミッションではありませんし、 反対するよりかは、原発に依存しない、自然と共生したライフスタイルをポジティブな提案をしていけたらと考えています。

個人的には、海がなくしては生きられないから、サーフィンするし、海に入り続けます。不安を感じる人は多いと思うけれど、いつこの不安が解消されるのかわかりません。不安の矛先を、放射能が出てる!ということで一喜一憂する気持ちもわかりますが、今後長期につきあっていくことだと考えるなら、自分ができる精一杯のアクションをやるしかないと思う。そして、命あることに感謝して、前向きに、ポジティブに、できることをできるときに。調査をしてみるとか、情報を広めるとか、これを一つのきっかけにライフスタイルを見つめなおすとか。そんなきっかけを与えたり、つなげる橋渡し的な役割になれたらいいな、と思っています。

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うん、広美ちゃん。いい話しを聞かせてくれてありがとう。ちょっと安心しました。「淡々と」「地道に」という言葉をたくさん使っていたのが印象的なインタビューでした。大好きな海に関わる活動だからこそ、ずっとこれからも末永く、何にも動じずに取り組んで行く。そんな静かな力強い意気込みを感じました。そしてどっしりかまえて自然の回復力を信じることも大切。そんなメッセージを受け取りました。リニューアルした松原広美さんの個人サイトもぜひ!ポスト3.11のライフスタイルのヒントがたくさんもらえますよ!