ポスト3.11 インタビューシリーズ ③ こどもみらい測定所

こどもみらい測定所 代表石丸偉丈さん(いしまるひでたけ)さん インタビュー http://kodomira.com/

東京国分寺にある「こどもみらい測定所」は、食品や土壌の放射線量を測る市民測定所。2011年12月、立ち上がった当初、代表の石丸さんにはJ-WAVEの番組に電話出演していただいてお話を伺ったのですが、それから2年あまり。市民測定所のネットワークは全国に広がり、何やら新たな活動も最近始められたと噂を聞いて、東京とコスタリカをskypeでつなぎ、改めてお話を聞かせて頂きました。落ち着いていてとても頼りになる存在、という印象の石丸さん。事故から3年経った今、気をつけるべき食品の傾向などを詳しく教えて下さいました。

Q. お久しぶりです。ラジオ出演して頂いたのが、測定所が立ち上がったばかりの、2011年12月ごろでしたよね?

そうですね。震災があった年の夏ごろから「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」で活動をはじめていたんですが、原発事故後、食品汚染の情報が少なくて、私もふくめて不安な人が多かったんですね。だから測定所必要だよね、ということで、2011年12月、震災があった年の暮れに、市民測定所を立ち上げたんです。

最初の6ヶ月はものすごく忙しかったですね。一般の方からの持ち込みも問い合わせも、雪崩をうったようにたくさんありました。今はフェーズが違って来ていて、生産者さんや流通さん、飲食店さんからの依頼が増えています。活動メンバーは、5~6人+お母さん達が10人ぐらいが手伝ってくれて、運営しています。最近は、助成金のとりかたなども学習して、申請も始めたところです。

Q. 3年経った今の汚染傾向はどうなんでしょうか?どんなことに気をつけるべきですか?

食品と土壌あわせて2000数百検体はかってきていますが、一番まずいのは、野山にはえてるきのこ類や山菜類ですね。表層のセシウムをすいあげてしまうものは、けっこう数字が出ているものもあります。大豆や豆類は、根っこについている根粒菌がまずい作用をおこしてしまってセシウムをやや吸いやすくしてしまう。あと泥の中にある蓮根。茨城の霞ヶ浦周辺はレンコンの産地ですが、だいたい数ベクレル。気にしている方は蓮根はさけています。

牛肉などはけっこう数字が抑えられていきています。これは飼料を輸入物に切り替えているなどの対策が効いているのでしょう。でもホリスティックにみると、飼料を海外のものに切り替えることで、GMO(遺伝子組み換え)のものが増える懸念があります。これで、とりあえず放射能は出ないのですが、、、。どうしたものか、という思いはありますね。

Q. うーむ。柑橘系のものから出る傾向にあると聞いた事がありますが。

この近辺(東京・国分寺)ではかってきた感触では、柑橘類など木になるものは出やすかったですが、年々数値は落ち着いてきている傾向が見えます。市民測定所ですからね、毎年、同じ方が同じ木のものをお持ちになったりするんで傾向が見れるんですけど、ゆずは、事故後は都内でも20Bq/kgあたり出ていましたが、今はこの辺ではごく微量に出てるかなぁ~、1~2Bq/kgあたりになりました。

去年、二本松に行った時に、栗の実を持って帰って来てはかったら、200Bq/kgありました。その場所は、0.7〜8マイクロシーベルト/時ぐらいあったんですよ。だからやっぱり空間線量が高いと出ますよね。ゆずの他にも、キウイは葉っぱが放射性物質をすってしまったし、栗、柿なども出ました。モモやリンゴもある程度は出ましたけれど、柑橘系ほどではなく、年々さがってきつつはある状況です。

それからお茶っ葉は初年度はかなり広範囲に検出されました。しかし、都内や関東・東北でも、畑に出来る野菜からはかなり検出が限定的です。日本の土がセシウムを吸着してくれて離さないでいてくれる影響のようです。

Q. お魚はどうでしょうか?

魚は、淡水魚が出ることが多めです。いわな、やまめ、あゆ、ブラックバスなどです。海ですと、2011年はマグロがカルフォルニアあたりでも、4~5Bq/kg検出されたケースがありました。マグロはかなりのスピードで泳ぐのですが、太平洋の西側にも、汚染を受けたマグロが到達したことが伺えました。初年度は日本近海のマグロは十数ベクレル出てましたが、最近は、かなり低いレベルの検出限界値で不検出のものが多くなっています。

検出例が多いのは、マダラ。100Bq/kg超えも多くて、なんでなのか調べたら、太平洋側のマダラは南は茨城から北は北海度まで動くのですが、通り道に福島近海も通る。そこで下の方をもぐった時に食べたものが蓄積したのだと推測されています。初期の頃は多数の基準値超えが出ていましたが、最近は見ている限り、数値は下がって来ています。

汚染水は最初にもれた量がすさまじすぎたので、今はダダ漏れでもありますが、相対的には、事故当初にくらべたら、だいぶマシにはなってきました。でも出ているということだけでも、良くないですよね。相対的には低くなっていたとしても。

Q. 2011年暮れの時点では、土壌や落ち葉から出てしまっているとおっしゃっていました。今は?

初年度の落ち葉は、こどもみらい測定所近辺のものをはかったら、様々な樹種のものが混ざり、概ね200~400Bq/kgぐらいの数字が出ていました。樹種によっても結構ちがって、けやきは1000Bq/kg前後出て驚いたものです。数値は年々かなり下がり、去年2013年の落ち葉は50Bq/kgを超えるものはなかったですね。

あとは松葉。松葉ってベタベタするじゃないですか、だからくっついちゃうんですよ。ダイオキシンを測る時に、同じ理由で松葉を使ったりするらしいんですけど。それが同じお宅の松の木で、当初は落ちた松葉が1000Bq/kgあったんですけど、緑の若い松葉は、100Bq/kgでした。この結果によって、新旧の松葉同士で汚染は1/10ぐらいに低くなっているのが見えました。

それから土ですが、土というのは数値があまり変わらないんですよ。基本的に今の汚染というのは、ほぼ2011年の3月や4月で決まっていますから。例えば関東では21日に雨が降ったんですね(福島は15日など)。それで大気中に飛んでいた汚染物質が落ちて来て、水道水からもヨウ素が22日に検出されています。今でもまだもくもくと出続けている、、、いうイメージがありますが、通常は気になるものではなくなっています。原発は収束していませんけれど、放出量は最初がひどすぎたので、まだ不安定ながらもあの頃にくらべると相対的には圧倒的に低いんです。

まれに不測の事態もあるかもしれないですけれど、今は新しいものが落ちてきているというのではなく、2011年3月・4月のもの、つまり事故当初のものがずっと残っているということです。土は吸着したら離さないし、チェルノブイリ以上に日本の土は粘土質が多くてセシウムを吸着したら離しにくいので、そのまま滞留しているということです。

Q. 例えば味噌などの加工品は生産地を特定するのが難しいですが、どうでしょうか?

今まで味噌をはかったところ、宮城などのもので、うちではちょっとは出たことはありますが、数ベクレル程度。微妙な感じです。味噌はそれほど思ったよりは出ていません。そもそも国産の大豆が少ないですし。でも確かに大豆は気をつけるべき食品の一つです。特に線量が高い場所の大豆は注意したほうが良いでしょう。

食品については、線量が高いところでは未だに高濃度の品目がありますが、特定の品目をさければ、内部被曝についてはだいぶ対策が打てるようになってきてはいます。この3年でだいぶ傾向や状況が分かってきたんですね。それらを知ることによって、食品の内部被曝は、種類や産地をみればかなり低減でき、無用な心配も減らすことが出来るということです。ただ空間線量が高いところは、いまだに外部被曝は一定程度ありますね、、、。これは本当に悩ましいことです。

Q. 石丸さんは、全国市民放射能測定所ネットワークの世話人もされているんですね?

はい。市民放射能測定所は今、全国に100ヶ所ぐらいあります。これまで、Facebookやメーリングリストでつながってガガーッとやりとりをして、測定器はどれがいいんだろう?測定の仕方は?データの見方は?などいろいろ有益な情報を共有してきました。「行政から出て来るデータは信用ならない」というのが3.11以降、意識の高い人たちの共通認識のようになってしまいましたから。特に事故当時は。

最近は、測定件数があちこちで減少しています。採算度外視で始めたところも多いので、運営や経営も見直さないといけない時期にきています。端境期のようなものですね。汚染状況が何も分からないという初期の時期は越えたので、違うフェーズに入って来ているんです。いずれにせよこの経験をもっと世界に出す必要があります。地道に続けることは続け、また世界にもっと発信していく必要を感じています。

みんなのデータサイトというウェブサイトがあって、全国の放射能測定結果を検索できるものなんですけど、それをもっと良くしたり、英語化もしていきたいです。これから数ヶ月かけて、より使いやすいものにしていこうと思っています。

Q.石丸さんはこれからも市民測定所での活動は続けられるんですか?

そうですね。最近はフェーズが違って来て、個人よりも業者の方からの依頼が増えて来ています。「うちのお店は測定していますよ」という証明を出して安心感を得てもらおうという姿勢を感じます。

私が出来たらいいなと思っているのは、有機農業の提携のように、生産者と消費者がつながっていて顔が見える信頼関係ってあるじゃないですか。今回の事故を超えて、測定を通じて、「この生産者さんはちゃんと測っていて安心できるね」というようなつながりがあちこちで生まれるような活動ができるといいな、と思っています。

もともとうちにある食品の測定器2台のうち、1台はアースデイ東京タワー・ボランティアセンターからの寄付で購入したものです。アースデイの精神にもあると思いますが、総合的・ホリスティックな視点がとても大事だと思います。これまで有機野菜を選んでいた人たちはリスクに敏感だから、事故後、関東東北産や国内産のものは避けるという風になって、これまで生産者さんとの信頼関係に溝が出来てしまったという悲しい現実がありました。だからこそ、もう一度、丁寧に測ることで橋をかけていって、信頼関係を再構築し、前よりももう一歩、食糧の生産というものを都会の人間も考えるようになれないか、と。TPPもやってくるので、今、まさに考え直す時です。

Q.  クラウド・ファンディングで資金を集め、高機能な空間線量計「ホットスポットファインダー」を購入されました。これによって可能となる「放射線見える化プロジェクト」について教えて下さい。

低線量で少しずつ被曝している子どもたちをなんとかしたい、という思いです。すでに34人の子どもが甲状腺の摘出をしているという状況で、今回の事故が確実に影響しているとは断定できませんが、非常に気になります。特に子どもの暮らす範囲、庭や道や公園・校庭などにはまだまだホットスポットがあるので、空間線量測定と対策はもっと徹底的にやらないといけないです。初期被曝に加えて、追加被曝もどれぐらい影響しているかはまだ分かりませんからね。福島を中心として線量が上昇した地域では、せめてよく行く場所、遊ぶ場所はもっと測定と対策をしなくてはなりません。今はまだ子どもたちの外遊びが放射性物質の問題によって阻害されています。これは子どもの権利を奪っているわけですから、由々しき事態です。

もともと僕は連れ合いが福島出身なんです。福島に残っている親戚や友達もたくさんいます。福島市などはあちこち測ると高いところがあります。親戚の庭を5センチ掘ってはかると、2000Bq/kgとか。通常はあり得ない汚染が日常になってしまっているし、もう汚染範囲が広すぎて、どうしていいか分からないですよ。事故後3年たって、放射能のことをあまり言われなくなってきたから、あたかも事故の影響は終わったかのような風潮がありますが、まったく終わっていないです。今でも悩ましい問題が山積しているので、多くの人が疲弊していますね。しかもそれを口に出してなかなか言えない。

原発事故の一番悲惨なのは、実はそこなんじゃないかという気がします。実際の健康被害もあるけれど、二次被害として副次的におこる人間関係の亀裂とか、子どもたちが外遊びができないことで発達が阻害されたりとか。それが非常に問題です。。。

Q. さて4年目。これからは?

柱がいくつかああります。まずは食品や土壌の測定は淡々と続けていきます。それから空間線量。福島もですが、実は周辺県も忘れられてます。周辺県では、いわゆる「風評被害」をおそれて、寝た子は起こしたくないという現状はあります。でも正確な事実をもっと知りたいという声や、福島同様に補償や対策をして欲しいという自治体も多い。だからあちこちにある汚染の状況をホットスポットファインダーを使って見える化していくことを、新年度は本格的にやっていきたいと思っています。

あと今、放射能対策の冊子を作っているんです。それを主に福島県内に配る予定なんですけど、3年間、調べ、測定をしてきて分かって来ていることを共有しつつ、対話の場を作って行こうと思っています。となり近所の人とは話しがしにくくても、お話会をやると、「はじめてこの話で共感し合えた!」という声が多いんですよ。「私だけが気にしていておかしいのでは」と思いなやんで孤立しているお母さん達が話し合える場作りはもっと必要だと感じています。

Q. 憤りを感じながらも自分たちの出来ることを模索し続けた3年だったと思います。ここまで続けてこられたエンジン、そして節目を迎えてまたこれからの活動にかける石丸さんのお気持ちは?

いろいろあるけど、仲間がよかったです。助け合いが生じて仲間と支え合えたからこそ、ここまでやってこれました。

また、まだまだ問題が終わってないから、やめられないですね。正直、経営や生活も大変ですから、これは続けられないと思った時期もありました。でもクラウドファンディングで多くの方にご支援をいただいたり、NPO支援組織の協力を得たりして、新しい活動も始まっています。僕は、ホットスポットファインダーを持って、福島や近県にもっと伺い、あちこちをちゃんともっと測って回りたいと思っています。現地の方とつながって出来ることをやりたい。冊子を配って作ったり、向こうの方々のニーズにそって測定することをやっていったり、小さなことでもどんどんしていきますよ。出来ることややるべきことはまだまだいっぱいあります。