友人KataのNGOとは

tve01.jpg“Tudatos Vasarlo”とは、ハンガリー語で「自覚ある消費者」(Conscious Consumer)。ブダペストのドナウ川の正面に、木なりの落ち着いたオフィスを構えるNGO、”Tudatos Vasarlok Egyesulete”は、”Association for Concious Consumers” 日本語に訳すと「自覚ある消費者の連合」。そういうと固く聞こえてしまうけれど、このNGO、ほとんど20代の有給無給10人のスタッフが楽しそうに働く、とてもクリエイティブなNGOだ。

NGOの目的は、買い物が環境社会にどんな影響を及ぼしているかを自覚的に考えて(1)消費を抑えたり(2)特定の商品をボイコットしたり(3)いつもとは別の商品(オーガニックやフェアトレードなど)を買うというアクションを促して行こうというもの。「啓蒙する」というよりも、より良い消費文化を考え作っていくことを「一緒に実践していこう」と呼びかけるNGOだ。

tve06.jpgこのNGOを4年前に設立したのは、29歳のカタ。去年ロンドンで勉強していた時に、知り合った友達だ。「最初はね、毎週水曜に、数人の仲間とカフェで集まって話し合うことから始まったの。買い物する時に、どの商品を買ったらいいのか全然情報がなくって、だったら自分たちで何か始めようってことで、まずはウェブに情報を掲載し始めた。最初はオフィスなんてないから、自宅がオフィスよね。そのうち雑誌を出版するようになり、助成金ももらえるようになり、オフィスも借りられるようになった。持続させるのはかなり大変だけど、なんとかやってるわ。仕事は忙しいけれど、やりがいがあるから続けられるの。」

“Assocation for Conscious Consumer”は、少ないスタッフで驚くほど色々なプロジェクトをやっている。例えば…

  • ウェブ雑誌の制作….買い物に関する日々の情報をアップ。ほとんどがハンガリー語。アクセスは一日10,000以上。彼女達のおすすめの雑誌、ecologist, Adbuseters, そしてEthical Consumer。この三誌は必ずチェックして、面白い記事はハンガリー語に訳して、ウェブに掲載もしている。
  • 雑誌の出版….「時間」「水」「化学物質」など、毎回テーマを設定して、専門家に執筆を依頼。3ヶ月に一度、出版する(下の写真参照)。デザイナーはハンガリーで一番と言われている人で、ボランティアで制作に携わってくれているそうだ。現在の発行部数は1700。次回のテーマ号「スーパーマーケット」には、私も日本の事例を書くことになった。(生活協同組合について書こうかと思っているのだけれど…どなたか面白い情報あったら教えて下さい。)
  • イベントの実施…様々な会議や音楽イベントでのブース開設による啓蒙活動やゲームの実施。下のカゴの写真は、イベントで色々な商品について説明する時に使うもの。
  • 出版・翻訳….ナオミ・クラインのNo Logoを訳したり(日本語訳は「ブランドなんかいらない」)、イギリスのNGO、Consumer Internationalのドキュメンタリー“Just Coffee”を訳したり。
  • 教育・トレーニング….UNEPが制作したyouthXchangeや、World Watch InstituteGood Stuff?の翻訳と、学校現場への配布
  • 政府への働きがけ
  • 企業データベースの構築… イギリスのNGOethical consumerが作っているような企業活動の情報提供や格付け
  • 国際組織との連携

と言ったように、一般大衆、教育機関、政府に向けて、といろいろなレイヤーの仕事をしている。オフィスは20代〜30代の若者が中心。子供が産まれたので、家から働く在宅ワーカーのお母さんもいるそうだ。専門性があってプロフェッショナルでありながら、楽しみながら仕事をしている。この雰囲気が、とっても大事だと感じる。

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この先の活動は何に力を入れていくの?と聴いてみると、「政府ともっと一緒に働いて、政策に影響を与えて行きたい。いくら消費者が意識を高めても、社会のシステムが追いついていないと、実際のアクションに結びついていかないから。例えば、子供向けの広告を控えるよう、企業へ規制していく。再生ボトルの利用を促進する法律を作る。そういった専門的な仕事を増やして行きたい」との答え。

気になるお給料やオフィスの維持費について聴いてみると、彼女の給料は一ヶ月12万円。日本よりも物価が安いハンガリーと言えども、生活するのがギリギリの額。一般企業で働いている大学の同級生は、その倍はもらってるそうだ。それからオフィスの家賃、インターネット費、光熱費などを合わせると、一ヶ月8万円ほどかかる。今のところ企業からの寄付は受け付けない方針なので、EU、ハンガリー政府、ソロス財団どの一般の助成金財団からのグラントに頼るしかなく、数ヶ月先のスタッフの給料を支払うのにもかなり大変…。カタの仕事の半分は、こういった助成金獲得のためのプロポーザル書きや、プロジェクト管理に費やされるそうだ。

tve05.jpg日本でも中小規模のNGOは、資金的にも同じような状況だし、多少の差はあれ、活動内容も似たようなものだ思う。でも異国でこうやって実際にNGOを運営している友達と一週間生活すると、こういう活動をやるのがいかに大変か、そしていかに報われる素晴らしい仕事か、ということが手に取るように分かって面白い。

日本のスーパーマーケットの映像を見せると、「なんで野菜や果物が、こんなに豊富にあるんだ!(例えばアボガドなんて、こっちでは超贅沢品)なんで全部、包装されてるんだ!(こっちでは量り売りが当たり前)」と、びっくりしていた。「Kokoも私たちのような活動を日本で始めればいいのに!」と言われ、その気にもなる。私が知る限り、日本で同じような活動をしているNGOでは、GPNがあるけれど、彼らはどちらかというと、政府調達に重点を置いている活動だし、フェアトレードやオーガニック商品を推進している団体は色々あるけれど、包括的に消費のテーマを掘り下げている団体は他に知らない。ただ興味の幅が広すぎたり、すぐ旅に行きたくなる私に、組織の運営なんて向いているかどうか、かなりの疑問。でも誰と一緒に組んで出来るかな?と考えたりするのは、とてもワクワクする。まぁ、まずは彼女達の活動を伝えるドキュメンタリー映像の制作を頑張ろうっと。

カタが教えてくれた本を一冊。アメリカのMalcolm Gladwellが書いている”Tipping Point”という本。「いかに小さな変化が大きな変化をもたらすか」という内容。日本語にも訳されている。是非チェックしてみて下さい。