翻訳はいかにすべきか

翻訳はいかにすべきか 翻訳はいかにすべきか
柳瀬 尚紀
岩波書店 2000-01
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今年に入って手がけている仕事のうち、最も時間をさき、最も苦戦していて、最も楽しく夢中になっているのが、そう、翻訳です。今は子供がまだ小さいため在宅で出来る仕事を中心にお受けしているのですが、翻訳はどこでも自由時間を見つけては取りかかれるのが利点です。最初に翻訳の仕事をしたのは数年前で、環境省のラムサール条約の英文書を日本語にするというものでした。「とても読みやすい」と褒めれて、それ以来、調子にのっておりました(笑)。しかし….

本気で臨んでみると、翻訳は本当に奥が深いことが分かります。完全になめておりました(笑)。集中力も、持続力も必要だし、何と言っても、かなりクリエイティブな作業です!翻訳は誰がやっても同じだなんて、とんでもない。訳者のこだわりや世界観がモロに出ます。私ときたら、中々思うように分かりやすい日本語にならないため、お恥ずかしい話し、「国連の書いた文書は固いから、しょうがない!」なんて開き直っていたのですが(今手がけているのは、国連が制作したユースエクスチェンジという環境教材)そうしたらクライアントさんからこの本を読んで下さいと勧められてしまいました。(ありがとうございます)

そして気づかされたこと多数。まず、翻訳はどんな外国語であろうと、日本語の問題だということ。例えば一般に日本語は代名詞を省くのが常識なので、いちいち訳さないほうが自然で読みやすくなるというのが、翻訳の常識。また日本語の場合、時制を行ったり来たりしても良い。気が進むから翻訳する、楽しいから翻訳する。そして翻訳は細部に宿る。本にはこんな風に書かれています。

昨日より今日のほうが、たとえほんのわずかでも上昇していなければならないと思う。ほんのほんのわずかの上昇は、細部へのこだわりによって可能になるのではあるまいか。

うーむ。なんだか哲学的。翻訳から見えてくるものって結構色々ありそうです。自分のつけた訳がなんだかしっくりこなくって、1つの文章を幾日もずっと考えていることってあるんですが、そうすると「これだ!」っていう言葉や言い回しが突然出てくる時があるんです。すごく爽快。翻訳冥利につきます。そうやって小さな事柄にも愛を持つことの積み重ねで、全体のクオリティーが高まっていくのでしょう。これはもちろん、他の仕事や、普段の生活においても言えることですよね。

私は読書家ではないので日本語に長けているとは思えないし、家にこもって作業するよりも人とコミュニケーションを図りながらお仕事する方が好きなので、正直、翻訳が天職とは思いません。でもせっかく与えられたお仕事だし、自分が伝えたいと思う事柄の文書を世に送り出す機会。まだ完全に訳し終えるまでに1ヶ月ほどかかりそうですが、少しでも多くの人たちに読んで頂いて内容が伝わる文章になるよう、10月は翻訳にじっくりと向き合うことにします。