公認会計士が勧める持続可能性

普段は全く馴染みのない「公認会計士」というお仕事ですが、先週グリーンTVの取材で、公認会計士のアジア大会を取材しに大阪まで行ってきました。なんでもアジア圏で活動する公認会計士が1000人以上(中国からだけで200人、その他韓国、インド、マレーシア、パプア・ニューギニアなどの国々から)集まる大イベントらしく、その中でも特に「環境会計」を専門にしている方たちへのインタビューを撮ってきました。久しぶりにかなりまじめでお固い内容の取材でしたが、イギリス大学院時代のアカウンタビリティーでのインターン経験も役立ち、CSR(企業の社会的責任)の今の現状もかいつまんでキャッチアップすることが出来て有意義でした。

「環境会計」とは通常の財務会計の他に、環境保全やCSR活動に費やしたコストを計算し、どれだけの効果をあげているのかを定量的に表した非財務の会計のことを言います。詳しくはこちらなどを参考にして頂きたいのですが、今回の取材で気づいた点をいくつか:

ー環境会計の情報は投資家、NGO、地域住民など、外向きのステークホルダーに対して有用なだけでなく、企業の従業員や環境マネージャーやCSR部署担当者など内向きのステークホルダーに対して(実は)有用な情報。環境会計をして初めて、各社のCSR活動がうまく行っているかどうかが測定できるし、それによって軌道修正も可能。

「外向けの環境報告書を作成するのと同じぐらい大事なのが、内向けへの環境情報の提供です。従業員の意識を変え、環境問題に関して真剣に取り組む気運を社内で高めることが、組織内の変革につながります。」(ロジャー・ブリット氏、南オーストライア大学教授)

ー環境会計の分野で今、最も求められているのはアシュアランス(評価)と比較の方法。評価基準や評価のための指標に何を用いるのかが課題。セクターや企業の規模にもよって違うので、一概に1つの物差しを当てはめるわけにはいかないのが難しい所。またそれらを何かしらの方法で比較出来なければ、本当に有益な情報とは言えない。現状は各社思い思いの方法で、カラー版のかっこいい環境・サステナビリティー報告書を発行しているだけ。

「報告書をどう使うのか、というのが次の課題です。財務報告所は株主などに使われます。しかし社会・環境報告書は、各社比べようがありませんし、NGOが彼らの活動に使う意外には、有用に使われているとは言えません。そして最も重要な課題は、どうアシュアランスを確保するかということです。報告書の作成はある意味、ボランタリーな活動。信頼性を高めるためには、外部評価をきちんとしなくてはなりません。サステナビリティーのアシュアランスにかける金額は、財務評価に比べてたった5%に過ぎません。」(デビッド・オーエン氏、英国ノッティンガム、ビジネススクール教授)

ーガイドライン策定で今、話題になっているのが重要性(Materiality)という考え方。ようは「企業にとって何が重要な課題なのかを特定して、横道のCSRではなく、本筋のCSRをしましょうよ。」ということ。富士山清掃活動もいいけど、思い切って石油掘るんじゃなくて、自然エネルギーの会社にしちゃえ、とか。詳しくはこちらなど。「あぁ〜企業ってこういう風に経営戦略を作って行くのね」と分かって面白いです。

ーCSRを公認会計士側からもっと推進していこうという動きが出始めている。今回の大阪大会でも「大阪宣言」と称し、アジア太平洋の公認会計士が環境会計について活動を強めていきましょう、という主旨の声明が発表された。環境会計はアジアではまだ始まったばかりだが、英国をはじめ欧米はずっと先を行っている。

「持続可能な社会に向けて、会計士はとても大きな役割を果たすことが出来ます。気候変動などの環境問題をビジネスに組み込むことが出来るのです。私たち会計士はもっと基準を高く設定しなければなりません。」(マリア・ファティマ・レイズ女史、フィリピン環境会計委員会委員長)

「会計はビジネスを紐解く言語」とも言われます。財務情報だけでなく非財務情報の開示を望む投資家も年々増えて来ています。(例えばこちらのビデオを参照)今の経済活動を健全なものにするためには、お金の流れを変える必要があるわけで、その意味でも公認会計士の果たせる役割はとても大きい。最近よく「攻めのCSR」と言うけれど、公認会計士も「守りのアカウンティング」(一般的な財務会計)だけやっていてもだめで、「攻めのアカウンティング」(環境会計の導入を企業に呼びるなど)をする時代。頑張っている公認会計士さんたちをメディアとしてもっと伝えて行きたい….と大阪からの帰りの新幹線から夕陽を眺めつつ思いましたとさ。