菜食シンポジウム:精進料理を見直そう

Twitterにはまってます。たいしたことをつぶやいているわけではなく、どちらかというと情報の受け手として。先週はダボス会議(世界経済フォーラム)からのリアルタイムのつぶやきで、ワクワクしっぱなしでした。ほんと新たな時代の幕開けという感じ!TwitterとUstreamで、3rd Summer of Loveが始まった!そして政治とリンクしているところが革命的、とみなさん盛り上がっています。またその話は書けたら書こうかな。



今日は、1月23日、建長寺で行なわれた「菜食シンポジウム」のご報告です。禅の心や精進料理の真髄を学びなおし、世界の諸問題から食にまつわるしくみや価値観を考えなおす、そして精進料理の発祥の地、建長寺にてお食事まで頂いちゃう、至れり尽くせりの濃い会でした。ご来場頂いた170名の方々の満足度もかなり高かったようです。ありがとうございました!

いやぁーかなり心を込めて準備した甲斐があったというか、司会という意味では至らぬ点も多々ありましたが、個人的には食について多いに学ばせて頂きました。考えてみれば、鎌倉に越してくるまでは肉中心の食生活、それが鎌倉に来てからはコンシャスな友達の影響で、夏はローフードを実践してみたり、地産地消を心がけてみたり、お肉がだいぶ減ったりと、私にとっては去年が食を見直す第一のステップ。そして大きな第二のステップが、この菜食シンポジウム。これで、食に対する新たなマインドセットが備わった!という気がしています。

それから意外にもというか、当然なのかもしれないけれど、一貫してスピーカーの方が言われていた事が「物が多すぎる世の中を改めよう」「過食から少食へ」というメッセージ。この素晴らしい気づきをみなさまにお裾分け!ということで、報告を読んで下さいね。(写真は、葉山のイケダトオル氏撮影。感謝)

主催者はこの方、よっちゃん(片山佳子さん)。鎌倉の仲間の一人で、アーユルヴェーダのセラピスト。地元の野草にも詳しくて、風邪をひいたらこの葉っぱが良いなど、アドバイスしてくれるナチュラル・メディスン・ウーマンでもあります。彼女が中心になって、「鎌倉から菜食文化を発信しよう!」との思いで「鎌倉ベジカルチャーマップ」を作ったのが大好評で、今回のシンポジウムを開催するきっかけとなりました。「日本に古くから伝えられている精進料理。日本食の基礎でもある精進料理を学びながら、菜食を食べて、知って、楽しむ会にしましょう」と、よっちゃん。


トップバッターはこの方、建長寺の高井正俊(たかい・せいしゅん)宗務総長。「禅の心と食」というタイトルでお話下さいました。日本で750年前に禅宗が始まった建長寺で、高井総長のお話を伺えるなんて!禅の精神が現代社会にとても有益だと思う私には、興味津々であり、ちょこっと緊張するスタートでもありました。

しかものっけから「禅とはどういう思想なのか、教えてください」と質問して答えを期待していた私に、高井総長は「丹羽さんはどう思われますか?」と聞き返してくる。えー!170人の前でー!と思いつつ、「自分とその他の命とのへだたりがなくなり無とか空とか言う境地に至り、つながりを感じることですかねー」みたいなことを言うと、「そうですね、丹羽さんもここにいるみなさんも私からの答えを期待していらっしゃると思うが、それは自分で考えることなんですよ、体現することです。食事も、美味しく食べることを心がけない限り、どんな美味しいものでも美味しく食べられません」と。なるほどーこれぞ禅問答。自分に問いかける、自分で考える、自分でものにする。これが今回、総長がおっしゃった事の中で、一番深く心に残ったことでした。どんなことにも通じる、生きる姿勢ですね。

高井総長のお話メモ:「禅の心と食」
「禅修行とは、基本的には江戸時代と同じ生活と思ってくれれば良い。3年やると、だいたい身に付く。一年目は体験、2年目は復習、3年目が工夫。修行をやって思うのは、人間はこんなにパワーがあるんだ!ということ。人間ってこんなにすごいものなんだ!と目覚めてくる。」
「精進料理の基本は、自給自足。自分で手足を動かすことが大切。間接的ではなく直接的に全部つながっていることが分かる。ものの命にふれあえる、自分の命にふれあえる瞬間。」
「禅の教えで、むさぼらない、おこらない、おろかにならないという3点がある。昔は、祖末な料理だった。それは良い意味で、素朴だったということ。そんな食事から、質素に生きる素晴らしさを感じる。」
「一番問題なのは、物がありすぎて困っている、ということ。贅沢な悩みだけれど、物から逃れないと!」
「お寺はもっと開かれた場所でなくては。昔から人が集まる場所であり、文化の発信基地だった。みなさんもどんどん地域のお寺にアプローチして下さい」


高井総長のお話を伺いながら、寺子屋にタイムトリップしたような気分でした。全く格式張っていない、とても分かりやすいお話で、お寺の存在がグッと身近になった方も多かったのでは?と思います。

2番目のスピーカーは、藤井まりさん。精進料理の達人で、「不識庵」という鎌倉稲村ガ崎のお教室もやっていらっしゃいます。ロンドン、パリ、NYなどでも精進料理の技と心を伝えていらっしゃる、バイタリティーあふれるチャーミングなおばさまです。(ブログはこちら

精進料理とは、野菜や豆類、穀類を工夫して調理したベジタリアン料理と言えます。土地でとれたものや旬のものを頂く、食材を無駄にせず全て使い切る、五葷(ごくん:ネギ類)を使わないなどの特徴があります。精進料理は、仏教の修行をするお坊さんの料理だけれど、体に良いし、薬膳的な意味合いもある。「身体に良い食べ方」とか「精進料理の知恵を家庭に活かす」ということに重点を置いていらっしゃる藤井さんならではの、示唆に富むお話でした。

藤井まりさんのお話しメモ:「食養生の観点から見た精進料理」
「旅して思う事は、食文化は気候や風土、歴史によるということ」
「旬のものはパワーがある。春苦み、夏は酢のもの、秋辛み、冬は油と合点して食へ。これは覚えておきましょう。」
「昔はものがなかったから、工夫して全部を使うしかなかった。だからこそ様々な調理法の工夫が生まれた。ひと手間かけるということ。」
「昭和30年の食事は、雑穀、お味噌汁、小魚、納豆。カロリー的にも、理想的な食事。」
「精進料理は、味付けが淡白。塩分はほとんどなし。だから素材の味が生きてくる。殺さないということが精通している。」

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【私の予習メモより】
精進料理の歴史:本格的に発達したのは、鎌倉時代。炒めてから煮るなど複雑な調理方法が発達したのも、このころ。料理研究家に影響を与え、料理の水準向上に貢献してきた。菜食で不足しがちなタンパク質を補うため大豆の加工も進んだ。味噌、醤油、豆腐、納豆なども生み出された。

典座教訓(てんぞきょうくん):道元によって書かれた、精進料理のバイブル。「良い材料が無いといって手を抜いてはいけない。たとえ道端の草しか材料がないときでも、工夫をこらして、心を込めて調理しなくてはいけない。常に工夫とこころを忘れてはならない。」

食療法は、薬食同源、五味五酸、身土不二、一物全体。素直に旬のものを調理していれば、理に叶った食養生的な生活が出来る。大まかに、夏は瓜系、冬は根菜系。

肉を食べないと栄養がとれない、スタミナが出ないと言う。日本人は、明治以前までほとんど肉を食べていなかった。1950年と比べると今や、肉類9倍、卵類7倍、乳製品18倍の消費。食事の欧米化により、自給率も80%から40%に下がる。ガンや生活習慣病も増える。

養生とは、病気にならないための日ごろの予防。早寝早起きはもちろんのこと、朝、早起きして髪を丁寧にとかす、昼食後は軽く散歩してから昼寝をする(目を閉じるだけでも良い)などの、養生法が。
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長々と書いてしまいましたが、藤井まりさんのお話から、精進料理がいかに文化的にも栄養的にも精神的にも理にかなっているものか、ということがとても良く分かったのでした。うーむ、精進料理、素晴らしい!精進料理の発祥の地、日本の鎌倉で、世界の食にインパクトをあたえるようなイベントを開催したんだ、という大きな意義を感じました。

そして…. お昼は、みんなで精進料理を味わいましょう!ということで、藤井まりさんメニュー監修のお食事でした。




まずはスタッフの方たちに敬意を!170名分の食事をスムーズに出したり、お食事の時に限らず、絶妙なさりげない気づかい満載のチームワークで、シンポジウムを作っていました。ほとんど鎌倉や湘南界隈のメンバーで構成していたことも、これからの地元密着の活動の大きな励みになったと思います。けんちん汁も前の日から仕込んでいました。本当にお疲れさま!

今回のシンポジウムを大きく支えて下さったNPOセンター事務局長の渡辺公子さん。それから料理を担当して下さった、精進料理レストラン「鉢の木」の藤川譲治さん。「鉢の木」は、鎌倉で純粋な精進料理を専門とする唯一のお店です。

こんな感じのお食事↓。日本人のDNAにしみいる、ほっとする味。昔の精進料理にくらべたら、きっと贅沢。ちなみに修行僧の献立は、朝;:おかゆに沢庵、梅干し、昼:米7麦3のご飯、みそ汁、漬け物、野菜の煮付け、夜:昼の残りものご飯とみそ汁を使ったおじやと漬け物だったそうですから。

「建長汁(けんちんじる」は建長寺発祥。お食事の素材の産地は、鎌倉率60%、神奈川県率80%、そして100%国産という徹底ぶり。よっちゃんが、鎌倉産の塩や、鎌倉のにがりを使った豆腐も探して来たそうです。

食べる前に、みんなで「いただきます」を言いました。なんて素敵な言葉なんでしょう!自分自身を生かすために、他の命を頂く、という意味。こんな素敵な言葉を食事の前に発する文化を私は他に知りません。それから、食事への心構えを説いた、「五観の偈(ごかんのげ)」を藤井さんに唱えて頂きました。現代語訳は….

1. 食事が食卓にのぼるまでに、多くの人が苦労したことを忘れません
2. いただく食物にふさわしいだけの徳を積めたかどうか、自問してみます
3. 食に対し不平を言わず、欲望を抑えます
4. 食事を良薬としていただきます
5. 修行して人間を完成させるために今、この食物をいただきます

ものすごく重い大切な言葉。今、中学生の半分以上が、いただきますと言わないそうですよ。

そしてまたすごいのは、後片付け。タクアンを一切れ残しておいて、それでお皿をふき、最後にお椀にお湯をそそいで洗い、飲み干す。水の一滴も無駄にしないお作法。これぞまさに究極のエコロジー。これも藤井さんに手ほどきして頂いて、全員がやってみました。

御馳走様…のあとは、建長寺境内を散策したり、フリートークを楽しんだり。

午後に入り、お次は、管理栄養士の林愛さん。27歳とお若いのに、経験豊富で堂々としたお話ぶりでした。トークは「五感をつかってベジ栄養学」。(ごめんなさい、この時間、あまり聞けてませんでした!)

そしてラストを締めくくって下さったのは、文化人類学者の辻信一さん。タイトルは「そろそろスローフード 今、何をどう食べるか」。辻さんのお話聞くのは始めてだったのですが、とても分かりやすく軽やかで得るものたくさんでした。その一つが「するではなく、いる」ということへの発想の転換。

「今、私たちはありとあらゆる巨大な問題にぶちあたっていますね。政治家や科学者などの期待するリーダーは答えを持っていない。アインシュタインの言葉で、You can’t solve the problem, with the same mind you’ve created it というのがあるけれど、私たちは今、新しいマインドセット(心の持ちよう、考えの枠組み)を必要としています。じゃあそれは何かと言うと、足し算のマインドセットではなく、引き算のマインドセットになることではないでしょうか。現代の特徴は、過剰だということ。することが多いし、物が多すぎる!全て過剰です。食もそう。食べ過ぎです!私は今の文化を、するする文化と言っています。それを変えなくてはならない。でも、するの反対は、しないじゃない。するの反対は、いる。私たちはすることに忙しくて、いることを忘れている。するを引き算すると、いるの力、なるの力が見えてきます。」

「僕たちの食をめぐるしくみは狂っています!食べるもの、食べ方、育て方、全てです。環境問題で一番大切なのは、食ではないでしょうか。地球温暖化を解決するのも食。原油の40%は食や農関連(土地利用、運送、放送など)に使われています!日本のフードマイレージは、世界ダントツで一位です。そして肉の過食が問題。みなさん、とにかく牛肉はやめましょう。あれはほんとに悪い。一人が牛肉をやめると、20人が食べられる計算です。」

「共食(きょうしょく)という言葉。みんなでご飯を食べる場は、譲り合い、思いやりなど大切な要素がつまった場所。全てがそこに表現されているから、私たちはそこに立ち返りさえすれば良いのです。」

松谷冬太さんも応援に駆けつけ、2曲披露。やっぱり音楽は和みますね〜。

と、こんな感じで心身ともに大満足の菜食シンポジウム、一日がかりの大イベントでした。そうそうトークの間には、セーラタオヨガのジェッシー(2人とも鎌倉在住)による簡単ヨガ体操もありました。

みんな心にも体にも、新しいエネルギーがみなぎったことでしょう!

一日通して、食に関する全く違ったマインドセットを頂いた感じがします。食を見つめなおすことは、口に入れる食べ物を通して、世界と自分との関係性をゆっくりと見つめなおすこと。食事がちゃんとしていると、生き方もちゃんとする。そのために意識的に食べ、練習を重ねよう。あれはだめ、これはだめ、ではなく、自分が美味しい、楽しい、気持ちいい、本当に嬉しくなる食事をしよう。食事で感性を磨いて行こう。精進料理を見直そう。今よりももっと楽しんで食と向き合おう。そんな柔らかで強烈なメッセージをみなさんと共有できた一日でした。

もう一度、よっちゃん始めスタッフのみなさま、スピーカーと参加者のみなさま、素晴らしい写真を撮影して下さった池田徹さん、貴重な気づきの機会をどうもありがとうございました!

<おまけ>我が家の精進料理?ご紹介!
シンポジウムに合わせて家のご飯もチューニング。普段からかなりヘルシーに食べているほうですが、この週は、お魚も(もちろんお肉も)いっさい頂きませんでした。(乳製品はちょこっとだけ)市場で仕入れて来た野菜や、ちょっとしたアイデアで、野菜中心とした料理の美味しくて豪華なこと!今、旬の根菜類をたくさんとっているので、今年は家族風邪知らずで過ごしています。

月曜日:豆ご飯、大根ときのこの甘辛煮、きんぴら、きゅうりの味噌づけ、ワカメと油揚げのお味噌汁。お味噌汁は、昆布と椎茸の出汁がおいしかった〜。きゅうりはちょっと味噌をつけるだけで、テラもパクパク。(でもほんとは、キュウリは体を冷やす瓜系だから、冬は食べません)

火曜日:春菊とワカメのサラダとレンコンパスタ。手抜きです。

水曜日:カブの葉とお揚げの炒め物、茎ワカメのショウガ和え、それに建長汁をしっかり作った!出汁は、昆布と椎茸。里芋、人参、カブ、大根と冬の根菜ばかりを入れて、本当にほっとする味に仕上がる。二杯目には、寺田本家の酒粕を入れて、さらにまろやかなお味で楽しむ〜。イエロー君が作ったカブのピリ辛漬けも、箸休めとしてサイコー。

木曜日:新年会で外食。和食の美味しい御馳走でした。

金曜日:カブのお味噌汁、ワカメと鎌倉野菜のサラダ、サツマイモと豆の温サラダ。とろろ。

そんなこんなで、我が家は食生活革命進行中ー!みなさまも「春苦み、夏は酢のもの、秋辛み、冬は油と合点して食へ」これは是非覚えて、食生活に取り入れ、寒い冬も元気に乗り切って行けますように。