非電化パークは、未来の暮らしの実験場

月曜日に、栃木県那須町の非電化パークに行き、発明家の藤村靖之さんに会ってきました。


行くまでは「非電化冷蔵庫」ぐらいしか、知らなかったんです。電気を使わなくても中をヒンヤリ保つ工夫をしている冷蔵庫。

こういうアイデア商品を作っている、葉山在住の面白いおじちゃんが、手狭になったんで那須に引っ越したんだと。そこにはいろんな商品が展示されている。葉山や逗子の仲間たちがツアーに行くというので、ついてってみよう!という軽い気持ちでした。

到着すると、まずは母屋の広いリビングに案内され、代表・発明家の藤村靖之さんのお話を伺いました。

「ここに来た人には、二つのことに、驚いてもらいたいんです。一つ目は、自分に出来る事が、実はたくさんあるんだということ。二つ目は、お金とエネルギーを使わなくたって得られる豊かさがあるんだ、ということ。人からものを切り離してしまったのが、経済成長。科学技術と経済は、私たちを幸せにもしたけれど、不幸せにもしたんです。今は、電動化とグローバル化。この二つがセットになって、ばく進してしている。そこで私は2000年の春、アンチテーゼとして、非電化とローカル化。この二つを活動の柱にしようと決めました。」 

いやぁー、もう一発でノックアウト。二酸化炭素を排出しないために電気を使わない、といった薄っぺらいお考えじゃございませんよ、この方。非電化パークは、彼の生き様そのもの。プロダクト開発という域をゆうゆうと超え、未来の暮らしに大切な文化活動をされていると感じました。

「非電化パーク」は7500坪という広大な土地!母屋やら、実験室やら、何やらが点在しています。広い畑もあります。元はバブルの時に作られた撮影所だったそう。

こちら、有名な非電化籾殻(もみがら)ハウス。断熱材にもみがらを使ったセルフビルドの家。屋根はススキでカバー。屋根のてっぺんには風車がまわり、ファンを動かして換気してくれる、という構造になっています。

もみがらが、壁に9センチ、屋根に18センチ、床に22センチも入っているんですって。漆喰には、海藻を混ぜこんだとか。もちろん全てノンケミカル。

窓ガラスからの熱の出入りを小さくした二重窓。いろんな工夫が組み合わさり、夏は涼しく、冬はあたたかいお手軽エコハウスの完成。

非電化パークでは、1年間コミットする住み込みの弟子を毎年4人募集していて、籾殻ハウスは、大工経験がないお弟子さん4人が4週間で20万円で作ったという点も強調されていました。藤村さんの言葉が印象的。


なかまと じかんと たいりょくが あれば
・・・
ステキで ガンジョーで ケンコーで
ゼロエネルギーの いえが
・・・
ただみたいにやすく できるかもしれない
・・・
ためしてみた
・・・
デ キ タ キ ガ ス ル

こちらは非電化ふろ小屋。3人で4週間で15万で完成。太陽熱温水器を利用し、供給がたりない時は、ゴミや薪を燃やして熱にするとか。「これからは風呂に入れない人も出てくるぐらい、格差が大きくなる。そんな時、仲間とお金をかけずにこんな風呂を作ればいいんだよ。」藤村さん、もうすでに、サバイバビリティーの実践をしていらっしゃいます。

こちらは、非電化バイオトイレ。3人が2週間で10万円で建設。「日本はうんちに対する異常な潔癖がある。日本ではバイオトイレがまだ30件ぐらいしかない。しかもどれも熱を使ったり、臭かったり。ぼくなんて海外に行くと、バイオトイレを探して、すぐに入っちゃう。」エコで快適なトイレにこだわりたい私としては、激しく共感!

これはムーミンハウス。フィンランド製のガーデンハウス。130万円で購入できて、簡単に組み立てできる。「自分の好きな場所に移動しながら住む、という暮らし方もこれからの選択方法。」


土壁の日時計。

アトリエには、手回し洗濯機、タイプライターなど、藤村さんのコレクションがいっぱい。他にも非電化コーヒー焙煎器、非電化もみがら機、手動懐中電灯、非電化除湿機などなど….アイデアが尽きません。設計図など技術は全て無料で公開しているというのも、いい。「独り占めしようとは思ってません。誰でも作れるのがいいんです。非電化製品を売ってもうけるような人が出て来ても、それは無理だと思う。電化製品の文化の中で非電化製品を売ってもしょうがないんです。私がやってるのは、経済活動ではなく、文化活動ですから。」

そして母屋にあった、数々の「適正技術」(appropriate technology) 。こういった持続性がある中間技術は、まさにガンジーが伝え、シューマッハのような学者が継承した教えの一つ。とても人間味にあふれた、「ちょうど良い技術」。



あぁこの場所の居心地の良さに懐かしささえ感じて、何度も涙が出そうになりました。「懐かしい未来」とはまさにこのこと。

藤村さんに聞いたんです。「今、鎌倉では生ゴミの処理方法について、どんな技術を導入したらいいか議論してます。家庭の生ゴミはコンポストで処理できるとして、事業系のゴミはどうしたらいいと思いますか?」そしたらこんな答えが。「最初にやらなくてはならないことは、食べ残しを減らすこと。カロリーベースで考えると日本人の食べ残しで、2億人の子供達の飢えが防げるのを知っていますよね。」本当にそうだよね、その通り。「でもそれでも出てしまう生ゴミはどうすればいい?」と欲が出て聞くと、「一つのレストランでもいいから、食べ残しゼロを徹底的にやってみる。野菜の切りくずや皮を使った美味しい料理をあみだしたりして、優しさとユーモアにあふれた取り組みを考える。後のことは、それを全力でやってから考えればいいんです。」

発送の転換というべきか、原点回帰というべきか。私たちは、問題の本質を見ずに、すぐに技術やお金でものを解決しようと急いでしまう。もしかしたら非電化という前に、早寝早起きとか、電気を使わない生活というものを、実践してみることが大切なのかもしれない、と思った。まだまだ出来ることはたくさんある。

葉山と逗子の仲間たちとも、話ははずみまくり。「「3万円ビジネス」を広めましょう!」「葉山ー那須」で妃殿下(ひでんか)、御用邸つながり!」なんて話も。「まだ30%ぐらいしか完成していない。これから力を入れるプロジェクトは、ストローベールハウスの非電化カフェ+ショップの建設。ノコギリを握った事がない新しい弟子が、50席 のカフェを50万円で作る。普通は5000万円かかるんですけどね。」と藤村さん。どこまでもムーミン谷の宮崎駿さんみたいな藤村さんに、すっかりみなさん虜になってしまいました。

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あたたかく迎えて下さった藤村ファミリーと、なごりおしいお別れをして向かったのは、1988 CAFE SHOZO。那須高原から車で15分。黒磯のアパートの2階から始まったという小さなカフェは、今ではアンティークショップなど、5店舗に発展。どこもハイセンスで、くつろげます。

根本きこさんの妹さんがやっていらっしゃるという、アジア食堂「籠」も、居心地よく美味しくてすっかりお世話になりました。


 借りて行った車のお支払いを、地域通貨なみなみでやる、というのも最高〜!未来にむけた心地よい暮らし方に向けて、とても多くの出会いがあり、インスピレーションを頂き、つながり合えた那須トリップでした。みなさん、心からありがとう☆♡☆

非電化パーク、ツアーやワークショップを定期的に行なっています。是非チェックして、1人でも多くの方に藤村さんと会って頂きたい!と思いました。TV東京の番組もご参考に。なお、今週日曜日のJ-WAVE LOHAS SUNDAYにて、午前6時ごろ、簡単なレポートを予定しています。雑誌「天然生活」の次号にも、特集が掲載されるそうですよ!

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