木を植える男

 仲良くしていたアイザック・ファミリーが、旅立っていった。今すんでいるコミュニティーはゲストハウスでもあるので、いろいろな人が来ては、また去って行く。常に新しい空気に満ちているのはいいけれど、別れはやっぱり寂しくて、特に家族のように仲良くしていた人たちが去って行くと、心にぽっかり穴が空いてしまったような気分。特にチリ人のアイザック・ファミリーは、滞在中、最も影響を受けた人たち。たくさんのことを教わり、心を通い合わせる無二の親友となった。

 

 

アイザックとナラのカップルは、チリを出発してから一年。ニュージーランドやインドのコミュニティーに滞在した後、タコメパイにやってきた。アイザックはいつも裸足で歩き回り、腰にはナタをぶらさげ、とにかく植物に詳しくて、植物が大好きな男。ガールフレンドのナラと一緒に広い敷地内を歩き回り、毎日せっせと木を植えていた。

これはライチ。種を苗床で育てたものを、大地に植えかえているところ。5年後にはたくさんの実を実らせますように、と願いを込めて植える。誰かが収穫してご馳走を頂く日を夢見て。  

レモンの木の接し木の方法も教えてくれた。 

「フード・フォレスト(食べられる木々がたくさんある森)を作るには、まずマメ科の植物をたくさん植えること。窒素を土にふくませるから、土が良くなるし、ほかの植物に適度な影を与えてくれるんだよ」 

種の保存の仕方、畑の耕し方、福岡正信式の粘度団子の作り方など、親切に何度でも熱意を持って教えてくれた。「種はとても大切。自分たちの種を保存しておけば、ずっとそれだけで食べて行けるんだからね」 

パーマカルチャー・デザイン・コースでは、一緒の班になって、荒廃した土地を豊かな森と畑によみがえらせるためのデザインをしたのだけど、元ランドスケープ・アーチストだった彼には、水や風や土の読み方を教えてもらった。 

ナラは22歳。大学を退学して、アイザックと一緒に旅に出た。若いのに芯がぶれず、いつも毅然としていて、コミュニティーのためにご飯を作ったり、買い出ししたり、朝から晩まで、疲れを知らず良く働く。テラも我が子のように可愛がってくれて、I LOVE YOU! といつも言ってくれていたっけ。 

先住民族の暮らしを尊び、「森に帰ろう、木を植えよう」というメッセージを全身から発信していた二人。火を囲み、歌を歌い、踊り、今ここにみんなで生きていることを喜び、たくさんのお祝いをした。 

アイザックの弟、サイモンは、若干18歳。こんなに落ち着いていてしっかりしていて安心する18歳って、全く出会ったことがない。「町なんて全く興味ないね。なんで町に住みたいのか、分からない。僕は自然の中で、自然とともに生きる知恵を学ぶほうがよっぽど楽しいよ」 

滞在の数日前、彼らはさらに奥深く森に分け入り、火を焚き、数日間断食をしながら、生活していた。これからマレーシアそしてオーストラリアへと旅が続くらしい。またいたるところで、大地に、そして人の心に種をまき、育てるのだろう。 

最後の夜には、ナラが物々交換マーケットを開いた。みんなが集まり、ワイワイとても楽しかった。みんなを巻き込みながら、お金のかからない社会を作る。小さな規模でいい。サラリとやってしまう所がとてもスマートでかっこいい。 

「僕が望む暮らしははっきりしている。きれいな空気、水、大地。それだけあればいいんだ」とアイザック。また旅の途中に戻って来て、ここに家を建てるかもしれないと言っていた。「それまでKOKO、頼んだよ。とにかく種を、木を植えること。そしてそれを育てること。そうしないと森を夢見ているだけだからね。種をまくことは誰でもできる、とても簡単なこと。それを毎日、実践するのみだよ」 

たくさん一緒に笑い、歌い、泣き、学び合い、仲間に、家族になった。私自身の心をこれからも大きく成長させていくために必要な栄養を、たくさん与えてくれた。離れていても、彼らが残してくれたスピリットを引き継ぎ、これからぶれることなく、せっせと大地に、心に種を受け続け、育てて行こうと思う。THANK YOU FOR YOUR INSPIRATION, ISAAC, NARA, AND SIMON. LOVE KOKO and TACOMEPAI. 

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