Disconnect to Connect - つながりなおす旅

2022年夏、アメリカ、ワイオミング州 グラン・ティトン国立公園 と イエローストーン国立公園 に行ってきました。15歳の娘と、アメリカ人の主人との1週間の家族旅行。大自然の美しさと力強さに息をのみ、多様な命と共生する暮らしについて考えさせられ、自分の存在自体とのつながりも取り戻すような、深く豊かな時空でした。

日本から行く場合は、Salt Lake City Bozeman West Yellowstone のいずれか3つの街の空港に降り立ち(多分LAとかSeattle経由で)、そこからレンタカーを借りるのが必須。少し遠い道のりですが、世界で最も古い国立公園 Yellow Stone National Park、そして隣接する弟分のような Grand Teton National Parkに日本からも訪れる人が増えたら嬉しいな、お役に立てばと思い、備忘録としても残しておきます。 

 

グラン・ティトン国立公園のハイキング

まずSalt Lake Cityでレンタカーをして、6時間ほどドライブしてグラン・ティトン国立公園へ。どんどん山が険しくなってきて、美しい景色を味わいながらのドライブ。グラン・ティトンは、フランス語で、「大きな乳首」。昔、ここにやってきたフランス人の冒険家が、冗談でそう呼んだのが定着したそうです。

泊まったのは、Jackson Lake Lodge. 部屋はシンプルだけれど、それでも1$300ぐらいするし、事前予約は必須。母家の巨大な窓から、荘厳な山がくっきりとみえ、特にサンセットどきが美しくてうっとりしてしまいます。ここだけ時間の流れが、だいぶゆっくりになったよう。

 近くのChristian Pondへの2時間ぐらいのハイク。国立公園では、ハイキング、釣り、野生動物見学、ピクニック、カヌーなど色々なアウトドアの楽しみ方があるのだけれど、今回は特にハイキングにはまりました。特にこの一番目にやったハイクが、他の人にほとんど遭遇せず、小さな池や草原を静かに歩く、一番のお気に入りでした。

夕日を見に、サンセットポイント、Signal Mountainへ。山々と大草原が茜色に染まり、静かに日が暮れていきます。

 

朝はJakeson Lake Lodgeで朝日を拝んでから、車で20分ほどの Oxbow Bend と Schwabacher Landing へ。メインの道路を走っているだけでは分からないのだけど、車を留めて少し歩くだけで、草原や湿地帯、ビーバーが作った川のダム、高原植物などが、様々な多様な景色を見せてくれます。ため息が出るほど、美しい、、、

 

Colter Bay のハイキングも、1時間ほどで、子どもでも簡単にできます。ここも大きな湖沿いと草原を歩いていくのですが、メインの道路を車で走っているだけでは分からない世界が広がっていて、本当におすすめ。「大切なのはゴールに到達することではなくて、ゴールまでのその道のり。歩く風景を楽しむのが、醍醐味!」と娘もハイキングが大好きになったようです。

 

グラン・ティトン国立公園は、イエローストーンに比べて、特に子ども連れのファミリーが多く、ハイキングやピクニックをしてアウトドアを楽しんでるようでした。もちろんキャンプもできます。総面積1256m2。とても広いので、今回は一番有名なJenny Lake周辺も行けなかったのだけれど、またぜひ訪れたい大好きな場所となりました。

 世界初の国立公園、イエローストーン

次にイエローストーン。グラン・ティトンから北へ45分間ほどと近く、兄貴分という感じ。ここは5泊したのですが、それでも見切れないほど、ここもとにかく広く、野生動物もいっぱいで、でっかいふれあいパークのよう!(娘談)

ここ全体が活火山の噴火帯エリアになっていて、至る所に間欠泉(Geyser)や温泉(Hot Springs)、Mud Holesなどの奇妙で生き生きとした地形が観察できます。

 Canyonエリアでは、グランドキャニオンやナイアガラフォールズさながらの滝も!圧巻。1872年、世界で最初に指定された国立公園。150年の間、ほとんど手付かずの美しい大自然が残されています。

 

82歳のナチュラリストが教えてくれた生き方

今回の大きな旅の目的は、旦那さんテリーの叔父にあたる、Uncle Harlan(ハーランおじさん)が公園勤務なんと50周年!(現役の82歳!)ということで、そのお祝いに駆けつけたのです。とにかく植物のこと、動物のこと、地形のこと、生態系のこと、なーんでも知っている生き字引で、そしてなんといっても元気いっぱい!Storm Pointという地域のハイク(2時間ぐらい)をしながら、この地域の歴史のこと、地形の成り立ちや動物の生息地の見分け方など、色々と教えてくれました。

 

イエローストーンにあるのは、だいたい4種類の木。もみFlat, Friendly, Flexible, Fir)、スプルース原木Sharp, Stiff, Square, Spruce)、マツ(Lodgepole Pine/Pinus Concorta)、Whitebark Pines(ほかのPinesよりも低くて太いのが特徴)。Whitebark pinesは、くまの好物だが、近年ではかぶと虫によって食べられ枯れてきてしまっているのが懸念されている、と。

イエローストーンは、1872年に国立公園に指定されて、今年で150周年。世界一古い国立公園ですが、ここには昔から27のネイティブアメリカンも住んでいたことでも知られていて、彼らは1万年以上の間、自然と共生した暮らしをしていたわけです。そこに白人が乗り込んできて「自然保護区に指定するから、人間の関与は認めない」と無茶な発言をしてきた歴史についても話してくれました。「今では公園の意思決定に部族代表にも関わってもらっている。この間、あの山の名前も、白人大佐の個人名から、Great Nation という名前に変更したところだよ。」

「体験しないことは、大切にしようと思わない。大切にしようと思わなければ、保全しようと思わない。だから若い人たちに、どんどん公園に来て自然を体験してほしい」とハーランおじさん。この方の自然を愛する、そして保全と共生について後世に伝えていく情熱をひしひしと感じました。

 

 

Avalanche Peak というイエローストーンで一番難易度の高いハイクは、往復7時間。ハーランおじさんの小学生の孫も含めて親戚一同27人で登ったのですが、私なんてヒーヒー言ってるのに、どんどん先頭をきって歩いていく82歳!本当に頭が下がります。途中、「ほら、Spring Beautyという名前のこの花。この時期2週間しか咲かないんだよ。そしてこの根っこは、熊の大好物なんだ」なんて説明してくれるので、色々学びながらのハイキングはとても有意義でした。

2500m地点から登り始め、頂上は3200mの高さなので、富士山と同じぐらいの高さ。大きくゆっくり深く呼吸して整えながら、、、

とにかく一時もとまらず、誰よりも元気な82歳のナチュラリスト。お祝いパーティーには200人以上の人が訪れ、夜遅くまで思い出話に花が咲き、様々な人から(そして多分動物たちからも)愛されている存在なのが、よく伝わってきて、こんな人がおじさんで誇らしくなりました。

 そしてとにかく情熱を持ったことを、とことん探求して、やり続けること。次世代に伝えていくこと。自分が大切にしたいことを大切にし続けること。当たり前だけれど、たまに忘れてしまうとても純粋なエネルギーの大切さを今一度、思いださせて頂きました。

動物王国の一員としての、人間

泊まったのは、Lake LodgeYellowstone Lake Hotel。部屋のすぐ近くまでバイソン(アメリカン・バッファロー)がやってくる!バイソンは、北アメリカ大陸でもっとも大きな哺乳動物であり、イエローストーンが一番の個体数を誇ります。

至る所でエルク(アメリカアカシカ)が草を頬張っていたり、他にも(今回は、遭遇できず残念だったけれど)オオカミやムースなど大型哺乳類もたくさん生息しているところ。大型動物が日常生活に日常的に溶け込んでいる生活をしていると、人間という生き物の命の捉え方も変わってくるし、命の豊かさや多様さを今一度、再認識することにつながります。人間は動物王国の一員に過ぎない。私たちの暮らし方も調整しながら、彼らとも共生していけるよう改めていきたい、と思いました。

ある夕暮れ時には、野生のくまも見れました!人間が野生動物に食い殺されることも、しばしば。イエローストーンは、人間が動物王国を仕切っている王様ではないことを自覚できるところでもありました。

 

真のつながりを取り戻す

イエローストーンは「一人一人が自然保護の意識を持ち、責任を持って行動してください」という方針で、柵や注意書きも最低限に抑えられ、それぞれの行動に任されているところが、大人で好感が持てました。そして大概の人が、節度のある行動をしていたと思います。

至る所に給水ステーションもあって、便利。ペットボトル水を買わずに済みます。ゴミのリサイクルは、まずまず。でも食事は、相変わらずビーフバーガーとか、ホットドッグとかが多く、、、あまりエコロジーな感じではなかったのは、残念。

何より、今回の滞在でよかったのは、WIFIや電波もままならずコミュニケーションが遮断されていたこと。ついついいつでもネットにつながっていて、意識がダダ漏れになってしまっていた私たちでしたが、娘でさえ「インターネットがないことで、もっと周りのことに集中し、いろんなことに感謝できた」と言っていました。どんなに精神が休まり、周りの自然と、家族と、そして自分の感覚とつながることができたか!それによって、忘れてしまいがちな、尊重や感謝の気持ち、立ち止まって味わうこと、センス・オブ・ワンダーを思い出せたことか!

DISCONNECT TO CONNECT。今回の国立公園巡りの旅は、もう一度、原点回帰。大自然とそこに住む豊かな動植物と共生して暮らしていくためにも、今ここの自分の言動を丁寧に、感覚を研ぎ澄まし、この与えられた奇跡の命をどう全うしていくか、そんな大命題を与えらた気がします。

さてまたここからどうやって歩んでいくのか。何をするにせよ「下界」で住みながらも、グラン・ティトンとイエローストーン国立公園で味わった思いを忘れることなく、広く深い心を育てるとともに、強靭な精神力や体力を育んでいきたいと願ってやみません。

 

 

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