「Dialog in the Dark」未来への体験記

ずっと気になっていた体験型イベント「Dialog in the Dark (ダイアログ・イン・ザ・ダーク)」に意を決していってきました!

「Dialog in the Dark」は、「対話(ダイアローグ)」を重ねながら、まったくの暗闇を少人数で探索するという、ほかには類を見ないユニークな、「エンターティメント」。発祥はドイツ。すでに世界30カ国で行なわれ、600万人、日本でも8万5000人が体験している、ということで、話題になっている取り組みです。

 

「意を決して」と書いたのは、わたしは閉所・暗所恐怖症だから。学生時代にトルコのカッパドキア遺跡を探索しようとして、洞窟に入った途端に腰がすくみ涙がぼろぼろ出て来てしまって、一目散に出口に急いだ覚えがある。ルーマニアを旅してヒッチハイクをしていた時に乗せてくれたトラックの荷台が暗くて狭くて、「ムリーーーー出してー!」と泣き叫んだこともあったっけ。考えるだけでも不安になり、ワナワナしてしまう。一説によると「お産の時に、産道で苦しかった経験があると、閉所恐怖症になる」と聞いた事があるけれど、母に聞くと、そんなことはなく安産だったそうですが、、、理由はどうであれ、「閉所・暗所恐怖症」という自分の弱点を知っていたので、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク、面白いから一度体験するといいよ!」と言われていたけど、なかなか行く気になれなかった。

でも今週日曜日は、9.11からちょうど10年目、、、、東日本大震災からちょうど半年、、、この暗闇の時代、どう進んで行っていいのか混沌としているけれど、これからの未来のために何が必要かを考えるにあたり、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は何か手がかりを与えてくれるんじゃないか、、、。そんな思いがあって、今こそ自分の弱点を乗り越えて、これを経験する時!と思って、おそるおそる行ってみたのです、、、

前日から本当に恐くて緊張していて、外苑前の開催場所には一時間半前に着いてしまって、気持ちを整え、「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせ、、、会場にはいると、受け付けのスタッフの方が優しく的確に注意事項など説明して下さって、少し気持ちも和んだ。そしていよいよ、、、

わたしたちの会は、6人の参加者。もちろんはじめて顔を合わせる人たちばかり、、、学生が4人、ビジネスマンらしきおじさまが1人、そしてわたし。あぁー、もっと事前にコミュニケーションをとっておけば良かったなどと思ったのも束の間、、、視覚障害者のアテンドさん(あだ名は「たいちょう」)に白杖(はくじょう:白い杖のこと)を渡され、軽く名前だけの自己紹介。「覚悟はいいですか?明かりをだんだん暗くして行きますよ」と言われた時には、もう逃げ出したい気持ちで生きた心地がしませんでした、、、

前置きが長くなりましたが、ここからが体験談。

<フェーズ1>
最初から分かっていました。恐れや不安は、自分の気持ち次第だということを。だから「大丈夫、絶対、わたしだったら出来る」と自分に言い聞かせていました。そうしたら真っ暗になった後、10秒ぐらいは心身ともにガチガチで「やっぱりムリかもーー!!」と思っていたのが、すーっと溶けて、その時を、その場を受け入れられる自分がいました。

「状況を受け入れる」「自分なら出来ると信じる」「呼吸に意識をくばり、心を平穏にする」。何をするにもすごく大切なことだと再確認。この気持ち次第で、(大げさに言うと)人生がわくわくするものになり、積極的に楽しみ、前に進めることが出来るようになるんだ、と思います。

「みなさんは夜の公園に来ています。まずは自由に探索してみて下さい」たいちょうから声がけをいただき、すでにワクワク冒険を楽しもうという気持ちになっている自分がいて、それはそれは嬉しかったのです。まずは暗闇を受け入れることが出来たという自分に拍手!不可能なんてない!やれば出来る!

<フェーズ2>
さぁ、探索が始まりました!白杖をたよりに、手を左右に動かしながら、いろいろな所にぶつかってみたり、椅子を見つけて座ってみたり、時にはブランコを探してこいでみたり!匂い、音、手の感覚、足の感覚、イマジネーション、、。視覚が閉ざされたと同時に、いろいろな感覚がムクムクとよみがえってくるのが分かるのです。すごくびっくりするのは、暗闇で何も見えないはずなのに「何か見える」ということ。木や草、人々のオーラ、気配。そういうものが視覚以外の情報をもとに頭の中で次々に創造されていくのです。

でも一番、頼りになるのは、耳から入って来る人の声です。6人の参加者は見ず知らずの人なのだけど「kokoさん、こっちだよ」「◯◯さん、大丈夫ですか?」「僕、先に行きますね」「橋を渡る時は、手をつなぎましょうか」「ここに段差がありますよ」などの声がけほど、頼りになるものはありません。と言うか、それがないと全くの暗闇で進んで行く手がかりがない。みんなが積極的に声がけし、時には体にさわったり肩をかしたりと、抜群のチームワークで冒険を進めて行くのです。

もはや意識は自分の心の「内」ではなく、そこにいる全員がどうしたらみんな快適に楽しく冒険を進められるのか、という「外」に向いていました。そのためには、今、自分がどこにいるのかまわりの人に教えてあげなくてはいけないし、取り残されている人がいないか気づかってあげなくてはならない。積極的に声を出し、体にさわり、助け合い、安心を提供し合い、困難な状況を切りひらき、乗り越えて、楽しむ。

あれれ?なんか、これって社会の原点じゃない?
でもなんで暗闇の中だとこんなスムーズに出来るんだ?
しかも数分前に会った見ず知らずの人たちのはずなのに、、、

ダイアログ・イン・ザ・ダークの発案者であり、ドイツ盲人協会の哲学博士、
ハイネッケ氏はこんな風に言っているそうです。
「暗闇は人を元に戻すメディア」

この試みを日本に持って来て展開していらっしゃる、代表の金井真介さんも
「本当の目的は、単なる暗闇体験ではなく、
人とのダイアログ(対話)なのです」と。

暗闇の中では肩書き、地位、容姿も全く関係なく、
人との「つながり」というものが突然、現れ、
大切なことに気づく、原点に立ち戻れる。
暗闇は、人の温もりや優しさを感じる心地よい空間でした。

<フェーズ3>
体験の最後に、カフェでお茶やビールを飲む(もちろんまっくら闇の中で!)という粋な計らいもあるのだけど、そこには街中にあるフツーのカフェのような演出がされています。参加者はすっかりリラックスして打ち解けて「乾杯!」とグラスを(手探りで)重ね、「どんな仕事してるんですか?」「バイトは何してるの?」と、会話が弾みます。アテンドしてくれた、たいちょうもいたのだけど、その時、私の口をついて出た言葉に自分でもびっくりしました。「たいちょうはいつから目が見えないの?どんな感じ?」

普段だったら、聞いちゃ悪いかなという遠慮だったり、かわいそうだなと同情の気持ちもあって、素直に聞けなかったと思う。でも暗闇の中では、見える人も見えない人も関係なかった。みんな見えないから。そして普段から見えない視覚障害者の方のほうが、いろいろなことを分かっていて頼りになれた。助ける、助けられるという立場が逆転していた。なんだか自分の中で、「なーんだ、みんな一緒じゃん。ちょっと状況が変われば、障害も障害じゃなくなるじゃない」という思いが自然とわいてきた。すごく大切な気づきだったと思う。

ダイアログ・イン・ザ・ダークには、障害者の雇用や、フラットな社会形成にも大きな貢献をもたらしています。

<フェーズ4>
明るい空間に出てきた。あぁーもう終わっちゃうんだ、という残念な気持ち。始まる前の緊張感からしたら信じられない。不思議だ。ラジオ用にインタビューをしてみたり、参加者みんなでシェアリングをした。でもその時思った。「あれ?なんかみんなよそよそしくない?暗闇のほうが、みんなおしゃべりしたり、仲良しだったよね?」

わたしたちは、目に見えるものに頼りすぎている。
見ることで「知ったつもり」になってしまう。固定観念や先入観もある。
もしかしてわたしたちは暗闇の中にいたほうが、いいのかもしれない、、、
いやいや暗闇で出来たんだから、光がある世界でだって、絶対に出来るはず。
人とのつながり、対話があるからこそ、わたしたちは生きている!

というわけで、参加者とともに記念写真をパチリ!真ん中が頼もしい隊長です!
参加者は口をそろえて「まだうまく消化できていない」って言ってたな。
わたしも同感。すごい衝撃だったから、、、
このチームには、不思議な縁を感じてしまいましたよー

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ある新聞のインタビューで、金井さんが語られていました。
「一人一人が変わることで、少しずつ社会が変わるという期待がある。ダイアローグ・イン・ザ・ダークは社会を静かに変えて行くインフラだと思っています」

未来の社会をどう作っていくか、自分なりにどう関わって行くかを考える節目の日となる、今年の9月11日。その日を目前にして、このタイミングでダイアログ・イン・ザ・ダークを経験させてもらい、本当に良かったと思いました。スタッフの方々、一緒に経験してくれた方々、たいちょう、ありがとうございました!

最後に渡された「Dialog in the Darkからのメッセージ」という紙に書いてあった言葉を書き写します。

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本日はダイアログ・イン・ザ・ダークにご参加下さりありがとうございました。
暗闇の中で頼りになったものは何でしたか?
ご自分の五感。そして人と声をかけ合うその温かさ。
きっと様々なことを感じられたと思います。
この暗闇はバーチャルなものかもしれません。
けれど皆さんが感じられた得難い感覚は本物です。

私たちダイアログ・イン・ザ・ダークは
この大切なものを暗闇の中の特別なものとして終わらせてしまうのではなく
皆さんが感じた温かさや優しさを
ご自分の日常にお持ち帰り頂く事を願っています。
お家に、学校にそして職場に、、、。

皆さんの周りにダイアログ(対話)が生まれ
社会に少しずつ信じ合うこと、助け合うことが取り戻せますように。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク
スタッフ一同

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この取り組みをチームワークを学ぶための企業研修に取り入れた会社も、すでに150社以上にのぼるとか(わたしも帰宅して、早速、サラリーマンの父にすすめた)。このイベント、四季折々にテーマ性を持って内容も変更されているということで、今回は夏バージョンだったので「夏祭り」という演出だったのが、芸術の秋になると、10月1日〜11月23日まではアートをテーマにした「まっくらやみの展覧会」バージョン、冬は「コタツに入る」だったり、何度いっても新鮮な体験が出来そうなのも嬉しい。そして来週末、9月17日、18日の2日間、横浜ワールドポーターズにて開催される「バリアフリーフェア2011」の特別企画として横浜で体験できる機会も。

是非ぜひ多くの人に体験して欲しい。
そしてそこでの気づきを、未来の社会につなげていけたら、
もっと平和で人間らしい世界になると思うのです。

今回のわたしの体験談は、今週日曜日、2011年9月11日、朝6時から放送のJ-WAVE LOHAS SUNDAYでも取り上げます。チケットプレゼントもある予定!
よかったら早起きしてぜひ聞いて下さい♬

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